世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年5月20日

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 ハリルザード元駐イラク米国大使が、4月12日付のニューヨーク・タイムズ紙で、イラクの内政危機を解説するとともに、危機回避のための米・イラン協力を呼び掛けています。ハリルザード大使の論旨は、次の通りです。

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政治的危機へと向かうイラク

 イラクは、財政問題、IS(イスラム国)との戦いに直面しており、政治的な危機は避けなければならないが、今それが起こっている。米国とイランは、それを回避するようにアバディ首相を助ける必要がある。

 3月31日にアバディ首相が議会に新内閣を提示してから、この危機は始まった。首相は、議会内の各政党の合意を取り付けずにこれを行った。新閣僚は改革派テクノクラートが多いが、政党を代表せず、政党の支持もない。アバディは活動家やイラクのシーア派指導者シスタニから、政府の規模縮小、歳出削減、腐敗撲滅など、改革の圧力を受けていた。それでアバディは先手を打った。もし有能で尊敬される内閣を提示すれば、公衆の良い反応とシスタニの支持によって、他の人もそれを受け入れるだろうと考えた。しかし、そうはいかなかった。クルド、シーア派、スンニ派の議会内有力政党は反発した。

 今後どうなるかは、国内の2勢力、外部の2勢力の立場が重要である。

 マリキ元首相はまだ政治力があり、内閣の成立を阻止しうる。しかしマリキはダワ党が首相の地位を持ち続けること、彼を追い出した人物が排除されていることで、全体として新内閣支持と言われている。もう一人はシスタニで、彼が反対すれば、新内閣は出来ない。

 イランは通常シーア派の各グループを仲介する。アバディには、米国に近すぎると懐疑的である。しかし最近、アバディ首相排除に反対した。その後の混乱がシーア派内の対立激化、ISとの戦いから目をそらすことになるなどの懸念があったからという。

 米国は最近、イラク人同士の合意を推進してきた。アバディとの関係もよい。米高官はイラン高官と同じく、イラクの政治危機はモスル奪還を遅らせ、財政問題処理も困難にすると考えている。

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