2024年4月20日(土)

ビジネスパーソンのためのエンタメ業界入門

2016年5月14日

 メタルロックへのリスペクトを持つBABYMETALのスタッフ陣は、初期から海外でのコンサートも積極的に行い、海外でもファンを増やしていきました。近年は、日本人アーティストの海外公演は珍しく無くなってきましたが、多くはフランス・パリのJAPAN EXPOや、アメリカ・ボルチモアのOtaonなど、日本のポップカルチャーをテーマにしたイベントへの出演が中心です。ところが、BABYMETALは、Sonisphere Festival やHEAVY MONTRÉALなど、メタルロック系の大型フェスティバルに出演したのが特徴です。イギリスの音楽誌METAL HAMMERが主催の「HEAVY METAL WORLD CUP」に日本代表として選出され優勝するなど、ヘビーメタルファンの支持を広めていきました。

 一方で、日本色を打ち出した衣装や振り付けなど、Jカルチャーのアイドルとしての要素もアピールしています。音楽的にも、ヘビーメタルの重音感溢れるサウンドを打ち出しながら、Jポップ的なサビの旋律を組み合わせて「BABYMETAL」としての独自色を打ち出しています。

グローバル市場における“勝利の方程式”

 グローバルなニッチジャンルとしてコミュニティを持っている「メタルロック」と日本独自のポップカルチャー「クールジャパン」を愛するJカルチャーファン。それぞれはメインストリームとはいえない、小さな市場であり音楽シーンですが、その2つのユーザーコミュニティを繋ぐことで「現象」として見せることができ、2つのコミュニティの周辺にいる「グレーゾーン」のユーザーの興味を継続的に惹くことできたのです。

 文脈を掛けあわせ、複数のユーザーコミュニティを繋いでいくという手法は、ユーザーが情報を媒介するSNS時代には、有力な手法です。音楽だけではなく、グローバル市場でコンテンツを広げていく際の考え方として、現状では最も効果的な「勝利の方程式」と言えるでしょう。複数の文脈(コンテキスト)を活用したマーケティング戦略。「クールジャパン」×「メタルロック」という2つの文脈を掛けあわせることができたことが、今回の勝因なのです。

 産業構造の変化や新興経済の勃興などから、日本にとってコンテンツ産業の役割は、以前とは比べ物にならないくらい大きくなっています。今回のBABYMETALの成功から学び、グローバル市場で活躍するエンターテインメントが増えていくことを期待しますし、現役の音楽プロデューサーとして、僕にとっても刺激的な出来事でした。BABYMETALに続くべく頑張りたいと、改めて気合を入れ直しています。

【訂正】本文中で「結成当時の平均年齢は​15.7歳」という表現がありましたが、11.3 歳の誤りでした。ご迷惑おかけいたしまして申し訳ございませんでした。

  
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