WEDGE REPORT

2016年5月15日

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 熊本地震から1カ月。支援物資の遅配も本震の1週間後にはほぼ解消されていた。被災地ではITの活用やボランティア団体と行政の連携といった、支援物資輸送の新たな取り組みが既に始まっている。全国の事業者が駆けつけたライフラインの復旧でも、随所に東日本大震災の教訓が生きていた。過去に学び、将来に備える災害大国日本。今回は物資輸送と都市ガス復旧の舞台裏を2回に分けてレポートする。

 バキュームカーがボーンと轟音を響かせると、作業員らの視線が地中のガス管につないだホースに集まった。一呼吸置いた後、ホースが不規則に揺れはじめると、「おっ、出た、出た!」と声があがる。タンクのモニターには茶褐色の水が勢いよく流れ込んでくる映像が映しだされた。

 「もし水が出なければ、別の箇所で穴を掘って、同じ作業を最大3回ほど繰り返すところでした」と現場責任者の大阪ガス・杉野裕章リーダーは胸をなでおろした。

ライフラインの復旧は復興に向けた第1歩となる(CARL COURT/GETTYIMAGES)

 4月16日の本震から1週間たった熊本市内では、あちらこちらでガス工事が行われており、県外ナンバーを付けたガス会社の車が行き交っていた。熊本市全域と周辺6市町で都市ガスを供給する西部ガスは、14日の前震で供給停止した約1100戸の復旧作業にあたっていた矢先に本震に見舞われた。約10万戸への供給がストップすると、同日中に日本ガス協会に復旧の応援を要請した。

 協会には全国200社以上の都市ガス事業者が加盟しており、半世紀も前から災害時の相互支援が行われてきた。今回は22社からピーク時で1日約2700人が応援に駆けつけた。

 協会から要請が来る前に事業者は応援の準備を進めていた。16日午前7時、東京・浜松町にある東京ガス本社では「非常事態対策本部」が設置された。本来、自社管内が被災した場合に設置される対策本部が、他社管内の災害を受けて置かれた初のケースだ。背景には都市ガスの小売完全自由化を来年に控え、ガス業界として信頼を維持しなければならないとの危機感もあった。

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