WEDGE REPORT

2016年5月15日

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 各部隊は自社で持ち込んだ資機材を用いて作業にあたるが、当然、西部ガスの仕様と異なるものも多い。

 「継ぎ手など材料の規格の違いで使用判断が遅れると復旧のボトルネックになる恐れがあったが、安全性と性能が担保できていたこともあり決断が早かった」

 ある現場責任者は安全性と迅速さが求められる状況下で西部ガスの判断を評していた。

 そもそも安全の根幹部分のガス管工事を他社の手に委ねるため、災害支援には事業者間の信頼と責任がなくしては成り立たない。突貫工事をしてガス漏れ事故を1件でも起こしたら「おしまい」という認識が応援部隊にもある。

 派遣する事業者にとってもこの間に自社エリアで天災などに見舞われるリスクもあるが、「お互い様」と各社は口をそろえる。

 応援に伴う交通費や宿泊費、工事費など人件費を除く一切の費用は全て被災事業者が負担するルールだ。時間をかければ復旧費用も圧縮できるが、西部ガスの道永幸典・現地復旧対策本部長は「利益など考えたら早期復旧はできない」と割り切っている。

激励が苛立ちに変わる2週間

 「24日9時現在 復旧率20.9%」。復旧部隊の拠点となる西部ガス熊本支社の通路には復旧の進捗を記した掲示が貼り出されていた。都市ガスのライバル関係にある電気が20日に復旧したこともあり、「負けてられない」と口にしながら現場に向かう者もいた。

 工事現場では通りかかった近隣住民が作業員に声をかけていた。「水風呂で頑張っています、お願いしますね」「ガスが来なくて不便だけど、今回は火事が少なくてよかったわ」。ただし、こうした地域住民の「激励」も、供給停止から2週間が過ぎる頃から、我慢も限界に達し「苛立ち」へと変わっていくという。

 9日振りの復旧を待つ藤本喜博さん、早苗さん夫婦が暮らす自宅兼喫茶店の開栓作業に同行した。作業を行う東京ガスライフバルの前嶋浩之さんは、自社エリアの顧客に接するように迷惑をかけたことを丁寧に詫びる。片づけが終わらない自宅に土足で上がるよう促されても、「そのようなことはできません」とためらい無く靴を脱ぎ、階段を駆け上がっていった。

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