チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年5月30日

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西本紫乃 (にしもと・しの)

北海道大学大学院公共政策学連携研究部付属公共政策学研究センター研究員

1972年広島県生まれ、広島大学大学院博士後期課程単位満了退学、元外務省専門調査員(在中国日本国大使館)。著書『モノ言う中国人』(集英社新書、2011年)。

 王毅外相だけでなく、最近の中国の外交の当事者やメディアの報道では、外交に関する話題でこれまでになくバッサリと相手を切って捨てるかのような表現が増えている。

英国首相も台湾総統も切って捨てる

 今回の伊勢志摩サミットについていえば、南シナ海問題が議題に上ったことについて、27日、外交部の華春莹報道官は「G7は自分たちのことだけ話し合えばよく、よその国のことに口出ししたり手出しすべきでない」と発言。また、英国のキャメロン首相が南シナ海問題について「ホワイトハウスは北京にやりたいようにやらせすぎた」と発言したことについて、『環球時報』は「自分たちがいまだに日の沈まない帝国だと思っている英国のキャメロン首相の思い上がりも甚だしい」と舌鋒鋭くキャメロン首相を批判する論評を出した。

 キャメロン首相個人を批判するなら「パナマ文書の一件で国民からの批判にさらされているから、中国に対して攻撃的に出るのだ」とでも言いたいところだろうが、パナマ文書の「パ」の字も触れてはいけないほどの今の中国ではさすがにNGだ。

 最近の中国の国際関係についての「切って捨てる型」の厳しい言いぶりは、G7やオバマ大統領の広島訪問だけにとどまらない。

 5月20日の台湾での蔡英文が総統に就任したが、それについて『国際先駆導報』が、蔡英文総統の家族は台湾の植民地時代から日本とのつながりが深いので、抗日の意識の台湾の人にとって受け入れられないとか、独身で子供もいないので政治スタイルは感情が入りやすいだとか、甚だしく誤解と飛躍に満ちた書きぶりの論評を出している。

 これほどまでに舌鋒鋭く他国に対する「切って捨てる型」の批判が、最近中国で増えているのには、中国外交の手詰まり感と国内メディアの硬直の表れではないだろうか。

南シナ海問題では四面楚歌

 特に南シナ海問題では、中国はまさに四面楚歌だ。昨年10月に南シナ海の領有権についてフィリピンがオランダのハーグにある国際裁判所に仲裁を求めた件について、まもなく最終的な裁定が下される見通しで、大方の見方では裁定では中国にとって不利な裁定になるだろうといわれている。ベトナムもまた米国との関係改善に動き出し、5月23日のオバマ大統領との会談後、ベトナムのクアン国家主席は「昨日の敵が今日の友になった」とベトナムと米国との関係強化を印象づけて中国を牽制した。

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