WEDGE REPORT

2016年6月28日

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「白タク」の行政指導が転機
地方から都会を攻める

 世界では都市部を中心に展開するウーバーが、日本ではなぜ丹後半島の山奥で高齢者の細々とした輸送ニーズを満たすために、わざわざ参画したのだろうか。経済合理性で考えると割に合わないはずだ。日本総研・井上岳一氏はこう分析する。

 「ウーバーは昨年2月にライドシェアの実証実験を福岡市で行ったところ、白タク行為と判断され運輸局から中止命令を受けた。タクシー事業者が多数いる都市部での展開が難しいと判断して、公共交通空白地の地方に狙いを定め、そこを突破口にライドシェアに対する認知と理解を広げる戦略に転換した」

 事実、ウーバーの高橋社長は、昨年の夏前から「ささえ合い交通」の発足に向けて、片道6時間かかる東京と京丹後市との間を幾度と無く往復している。「ささえ合い交通」の立ち上げと並行して「ライドシェア特区構想」の立案にも入れ知恵したと考えるのが自然だろう。

過疎化で地域の交通が廃れてゆく(写真はイメージです)iStock

 一方、過疎化により地域の足を維持するのに苦悩する自治体にとっても、ウーバーは渡りに船である。

 京丹後市企画政策課野木秀康係長は「市内には交通空白地の予備軍もあり、行政主導でやろうとするとバスやタクシーの車両購入費やメンテナンス費も嵩んでくる。地域の活力やシステム力を活用して地域の足を継続的に守りたい」とウーバーに期待を寄せる。

 ウーバーにはこうした地域交通に関する悩みを抱える全国各地の自治体からの問い合わせが絶えないという。高橋社長も「初めて過疎地域で形になったプロジェクトなので、ここ(丹後町)での色々な学びを他の地域でも活かしていきたい」と意欲的だ。

 しかし、ウーバーはいつまでも「地域交通」の救世主として日本市場に留まっているはずはない。ICTを用いて「都市交通」のあり方に変革をもたらすことが彼らの主目的である。そのためには、交通空白地の有償運送であれ、国家戦略特区の過疎地の観光客運送であれ、地方での実績を積みかさね、それを梃にして「岩盤規制」を打ち破り、都会でのライドシェアを勝ち取らなければならないのだ。

 丹後半島の過疎の町で火蓋を切ったタクシー業界とウーバーの戦いは、双方とも経済合理性に欠く消耗戦の様相を呈しているが、それは将来の存亡をかけたライドシェア前哨戦であって、双方に「地方の足」問題を本気で解決する意思はなさそうだ。

  
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