WEDGE REPORT

2016年6月28日

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バスやタクシーの撤退が相次ぐ中、Uber(ウ―バ―)は地域交通の救世主となるか。タクシー業界は将来のライドシェア解禁の布石になると戦々恐々としている。

 日本海に面した京丹後市丹後町で5月26日、自家用車で住民や観光客を有償運送するサービス「ささえ合い交通」がスタートした。人口5500人、高齢化率40%の過疎の町は、地元タクシー会社が撤退した8年前から公共交通空白地となっていた。

Uberの端末を操作する「ささえ合い交通」のドライバー

 運行主体のNPO法人「気張る!ふるさと丹後町」の村上正宏理事長は出発式で「ボランティア意識の高いドライバーのお陰で運行ができる。行政のできないことを私たちの力で何とかしたい」と力強く挨拶した。

 自家用車(白ナンバー)による有償運送(いわゆる白タク行為)は道路運送法で禁じられているが、バスやタクシーが十分に走っていない交通空白地では2006年から特例制度として認められている。公共交通機関の撤退が相次ぐ中、全国の約3割の自治体で白ナンバーが合法的に運行されている。

 今となっては珍しくもない自家用車有償運送だが、「ささえ合い交通」に注目が集まるのは、世界約70カ国で自家用車によるライドシェア(相乗り)サービスを手掛ける米国ウーバー・テクノロジーズの配車システム(アプリ)を日本で初めて導入したからだ。

 18人いる登録ドライバーが仕事や家事の合間にスタンバイしており、最寄りの利用者からアプリを介して配車要請がくると自家用車のハンドルを握る。運賃はタクシーの半額程度で、ドライバーに運賃収入の大半が入り、ウーバーにも配車の都度手数料が落ちる仕組みだ。

最初の利用者はシンガポールからの訪日客。隣町の最寄り駅まで利用した

 ウーバー日本法人の高橋正巳社長は「我々が持っている技術を活かし、ボタンを押すとすぐに車が迎えにくる世の中が作れれば、日本の超高齢社会が抱える色々な交通課題の解決につながると思う」と期待を込めて挨拶した。

 

「アリの一穴」を阻止せよ
交通空白地に越境参入

 この1カ月前の4月27日、報道陣が大挙して押し寄せた「ささえ合い交通」の出発式とは対照的に、隣町の網野町では「網野タクシー」と「久美浜タクシー」の合同出発式がひっそりと執り行われた。車で2時間も離れた京都市のタクシー会社である高速タクシーと近畿自動車が、タクシー会社が撤退して交通空白地となっていた両町に越境して開設した営業所である。

 なぜ人口減少が進む町に、それも同業者が撤退した後に、京都市内の会社がわざわざ営業所を構えたのか。そこには「ウーバーによるライドシェアを阻止せよ」というタクシー業界の特命があった。

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