世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年8月9日

 米ブルッキングス研究所のオハンロン上席研究員が、7月4日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙で、トランプ大統領候補のアジア政策は、台湾の核化の動きを助長するなど、台湾海峡の戦争リスクを増大すると警告しています。主要点は次の通りです。

 ドナルド・トランプはアジアからの米軍撤退を主張し、日韓は核武装をするのが最善かもしれないと示唆している。この考えは基本的に間違っている。それは日中戦争のリスクをもたらし、NPT不拡散体制を揺るがす。

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台湾海峡の戦争リスク

 しかし、最大の危険は台湾海峡に戦争リスクをもたらすことである。在日米軍基地なくして、米国は中国の台湾攻撃を抑止できない。その場合、中国は、台湾への武力行使について今まで程には躊躇しなくなるだろう。

 さらに、台湾は核武装に向かうかもしれない。中国はこれまで台湾が核化すればそれを阻止するため攻撃することを明らかにしている。米国は、1979年台湾関係法により台湾防衛にコミットしている。これは、NATO条約第5条ほど明確な規定ではないが、今まで中国抑止の効果を発揮してきた。今の状況は安定的であるが微妙である。中国は、2つのこと、すなわち台湾の独立と台湾の核化の場合には武力を行使すると述べてきている。

 トランプが大統領になれば、台湾の指導者は大きなジレンマに直面する。台湾は1970年代と1980年代末期に核開発をしようとしたことがある。核の傘がなくなれば、台湾にとって核化のインセンティブは大きくなる。トランプのアジア戦略を実行すれば、米国にとって、海軍と長距離爆撃機を除き、台湾を防衛する手段がなくなる。これらの能力だけでは中国による台湾の封鎖を解除することは難しい。

 このような状況は米国にとり決して望ましいことではない。台湾を、中国に対して自らで守らねばならないような状況に追いやることは危険である。トランプのアジア政策の最悪の結末はここにある。

出 典:Michael O’Hanlon ‘If a President Trump Turns His Back on Taiwan’ (Wall Street Journal, July 4, 2016)
http://www.wsj.com/articles/if-a-president-trump-turns-his-back-on-taiwan-1467650733

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