2024年4月19日(金)

ネット炎上のかけらを拾いに

2016年9月7日

「男の性欲は止められない」という時代遅れの言い訳

 このつぶやきには、「何言ってんの?この人…」「酷すぎてびっくりした」「セカンドレイプの犯人」など批判が殺到。中場氏は、しばらく批判に反論していたが、28日になって突然「一身上のイライラでTwitterやめます。今から二度と読みません。あほくさ。楽しくない」などとツイート。ツイッターをやめる宣言をしている。

 3人の失言に共通するのは、性犯罪をネタにして笑いを取ろうとする態度だ。また、梅沢氏と中場氏の発言からは特に、「男は性欲が強く、その性欲は止められないもの」という意識が読み取れる。「女は男の性欲の対象となるもの」という前提があり、だから梅沢氏は女性タレントに「ヤラせておけば事件が起きなかった」かのような発言をし、中場氏は被害者である女性従業員が迂闊だったかのような発言をしている。

 しかし、男性であれば誰でも性欲を抑えられないものなのだろうか。見境なく女性を襲うのだろうか。もしそうだとすれば、男性は男性であるというだけで全員が強姦魔になってしまう。いくら性欲が強くても、人を強姦していい理由にはならない。強姦事件が起こったときに「男は性欲が強いから女が気を付けろ」というのは、自分の責任を放棄した幼稚すぎる論理だ。

 こういった失言は、とかく「女性が怒る発言」「女性の敵」などと表現されるが、男女関係なく理性ある人間の敵である。まるで男は性欲を理性で止めることができなくて当然であるかのような、こんな野蛮な発言には、理性のある男性も怒るべきではないのだろうか。

 また、中場氏がユーザーからも指摘されているように、責任が被害者にもあるかのような発言は「二次被害(セカンドレイプ)」にあたる。性犯罪・性暴力につきまとう誤解や偏見についての知識がないからこそ、こんな顰蹙を買う発言をしてしまうのだろう。何ら知性も面白さも感じさせない、ただのおやじの下ネタの延長で性犯罪を矮小化している。

 中場氏のコメントを「いろんな意見があっていいのに」と擁護する人もいるようだが、それは殺人事件が起こったときに「殺されるほうも悪い」という意見を擁護するのと同じだ。テレビの前でおっさんが尻をかきながらのたまうなら誰も聞いていないが、ツイッターのコメントは全世界に向けて発信されている。批判があって当然だ。

 「性」についての話題を、下卑た笑いにしようとする風潮は世の中にある。幼稚だとは思うが、必ずしもそれが悪いわけではない。しかし、「性」と「性暴力」は別のものであり、「性暴力」には加害者と被害者が存在する。その差異がわからない人が世の中には案外多くいて、しかもいまだに権力を握っていたりするのだ。断固、抗議し続けるべきである。

  
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