2024年5月20日(月)

障害と共に生きる~社会で活躍するチャレンジド

2016年10月5日

障害や病気を原動力に

初瀬:今回の対談の焦点は2度目のガンの入院で自分にしかできないことに気づいたという点でしょうね。印象として障害者というよりも、ガンのサバイバーという立場ですね。

鈴木:障害は生まれたときからなので、トイレの感覚がないとお話ししましたが、感覚があることを知らないんです。だから、感覚がなくて、なにが悪いんだろうと思っています。

 走れないこともはじめからだから、何も悪いことはないんです。だから、障害者だからって、それだけで社会的弱者とか可哀想な存在ではないんです。

初瀬:それに鈴木さんは子どものころからリーダーシップを発揮していたわけですから、障害者を子に持つ親御さんたちにしてみれば、心強い話になるんじゃないでしょうか。

鈴木:言葉はきついかもしれませんが、障害者だからといって全て守ってあげる存在だとは思っていないんです。逆にいえば、障害者はいかに障害を生かして暮らしていくか、病気も同じです。その経験やら体験を生かして、逆に原動力にして強く生きていくことです。

初瀬:鈴木さんが言うと凄い説得力がありますね。それでは最後に今後の目標を聞かせてください。

鈴木:医療者と患者の関係から、社会を変えたいという思いがあります。最終的には患者というよりも、一般の方々に対する教育といいますか、自分の体は自分で守らなければいけないという意識を持つこと。これを国民が当たり前に教わる社会を築きたいということです。たとえば学校で国語とか数学を教わるように、「健康」みたいな教科として学んでいくイメージです。

 そうすれば医者崇拝もなくなりますし、医療でも自分が主体になっていくと思うんです。そういった社会をつくりたい。でもそんなことは僕が生きているうちにできるとは思えませんので、まずは患者さんの意識をかえるような文化を作っていきたいと思います。

 患者と医療者が近づける場が街の中のいろいろなところにあるイメージです。ゴールの形は見えませんが、共に作り上げていくことが大切だと思っています。

 両者が歩み寄れば、そんな場があれば、必ず医療現場は変わっていきます。

初瀬:本日はありがとうございました。僕もいろいろやりたいことがありますので、『みのりcafe』でオリンピックやパラリンピックに出場した選手たちと交流の場を作りたいと思います。

<鈴木信行プロフィール>
1969年生まれ。工学院大学工学部卒。
第一製薬(株)(現第一三共(株))研究所を経て、2014年患医ねっと株式会社を設立。
生まれつき二分脊椎症(脊髄髄膜瘤)による下肢麻痺および膀胱直腸障害による身体障がい者(障がい者認定2級)。
精巣腫瘍(20歳)に罹患、手術、抗がん剤治療をするものの、再発、腹部リンパ節に転移(24歳)。甲状腺がん(46歳)
元日本二分脊椎症協会会長。
北里大学薬学部非常勤講師(2016年~)。日本医科大学倫理委員会委員(2016年~)。
精巣腫瘍患者友の会副代表(2011年~)。ペイシェントサロン協会会長(2015年~)。NPO法人患者スピーカーバンク理事長(2011年~2016年)。みのりCafeオーナー(2008年~)。
日本スペシャルティコーヒー協会認定コーヒーマイスター。

  
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