金融万事 塞翁が馬

2016年10月13日

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渡邊竜士 (わたなべ りゅうし)

トムソン・ロイター・マーケッツ株式会社 執行役員

トムソン・ロイター・マーケッツ株式会社 執行役員。1972年東京生まれ、米国育ち。 慶應義塾大学 総合政策学部卒業、野村證券株式会社入社。国内外の機関投資家向け営業を経て、マネージング・ディレクター就任。セールストレーディングやヘッジファンド向けビジネスの責任者に。香港でアジア戦略に携わった後、2014年1月退社。2014年6月トムソン・ロイター入社。

 『ロボアドバイザー・サービス」が急増 - 資産運用元年に突入(前回コラム、9月23日)』では、ロボアドバイザー・ブームが日本の資産運用を高度化する鍵であり、「貯蓄から投資へ」の希望と説明した。資産と時間の分散による投資効果を体験することが、金融リテラシーを向上し、投資マネーを増やす可能性を持っている。

 先日、FinTech(フィンテック:ITによる金融サービスの進化と創出)業界のカンファレンスで、この分野のグローバル・リーダー達のパネルセッションにモデレーターとして参加する機会があった。「ロボアドバイザリーは資産運用の世界を変えるか?」というテーマで、米国の Betterment共同創業者兼社長と、Acorns共同創業者兼会長、英国の Nutmeg CIO、そして日本の 楽ラップ の事業部長と関わる事ができ、多々感銘を受けた。

 特に、欧米ロボアドバイザー業界ではその運用資産が60-70%(CAGR=年間平均成長率)で成長しているが( Bettermentは運用資産がこの1年で約5倍に)、その市場成長や拡大の減速を待たずして提携・M&Aを含む様々な施策やサービスの向上へと進展している様は刺激的だ。その中でも日本で生活をする我々とそれを支えるお金について、より豊かな経済のヒントとなる内容をいくつか紹介したい。

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心をくすぐる Acornsの発想

 Acornsはとてもユニークなロボアドバイザーで、ロボアドバイザーを含むFinTechの本質的な価値がギュッと凝縮されている。

 ユーザーはスマホやスマート機器のアプリ(またはWebホームページ)で口座を開き、クレジットカードやデビッドカードをここで事前に登録する。すると、それらのカードで買い物をする度に、”あらかじめ設定した切り上げの金額単位“までの端数の金額を、自動的に資産運用へとまわしてくれるのだ。運用方式は当然ロボアドバイザー。

 つまり、予め “100円単位” と設定し、4860円の買い物をしたならば、カードの決済口座には4900円が請求され、40円がロボアドバイザーで投資運用される。”1000円単位”の設定では、運用金額が140円となる塩梅だ(分かりやすくするために円表記にしたが、実際はドル建て)。

 お金を使う時の罪悪感(あくまでも個人差ありますが)を少額投資で軽減、また少額積立を好む心をくすぐる。マイクロ・インベストメント(少額投資)とロボアドバイザーを掛け合わせたサービスで、数多くの口座の投資・決済を自動処理するIT技術と、カード会社を含む金融機関における送金・決済コスト(価格)の低下が鍵となっている。「貯蓄から投資へ」を促す手段として、是非とも日本でもお目にかかりたいサービスである。

 携帯アプリでのサービス提供がWebページ経由に先行したことからも明確だが、ミレニアル世代(1980年代~2000年代初頭生まれ)の投資初心者層をターゲットとしている。サービス開始から2年強になるが、目論見通りのミレニアル世代の心を掴み、口座数は100万を超えている(ロボアド大手のBettermentでも20万弱)。口座当たり運用残高は平均$175(約1万7000円)だ。

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