赤坂英一の野球丸

2016年11月2日

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赤坂英一 (あかさか・えいいち)

スポーツライター

1963年、広島県生まれ。86年に法政大学文学部卒業後、日刊現代に入社。88年より、スポーツ編集部でプロ野球取材を担当。同社勤務のかたわら週刊誌、月刊誌で、スポーツを中心に人物ノンフィクションを多数執筆してきた。最新刊『すごい!広島カープ 蘇る赤ヘル』(PHP文庫、『広島カープ論』増補改訂版)が重版出来で2万部突破。ノンフィクション『失われた甲子園記憶をなくしたエースと1989年の球児たち』(講談社)が第15回新潮ドキュメント賞にノミネートされた。ほかに『プロ野球「第二の人生」 輝きは一瞬、栄光の時間は瞬く間に過ぎ去っていった』(講談社)『最後のクジラ――大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生』(講談社)『プロ野球コンバート論』(PHP研究所)など。

 カープが日本ハムに2勝4敗で敗退、日本シリーズが第6戦で終わって一夜明けた10月30日、広島市のコンビニで日刊スポーツを買ったら、テレビ番組欄に第7戦の放送があると記載されていた。中継局はテレビ朝日系列の広島ホームテレビで、解説は広島OBの前田智徳氏。コピーに「日本一願い広島はひとつに!! 最後は笑顔!」と謳われている。一応、中止、及び第6戦で優勝決定の場合は別番組に替えられるという但し書きがついていたが、32年ぶりの日本一を逃したファンの悔しさを象徴しているようにも見えた。

 第7戦が行われれば、第3戦から中4日で黒田博樹が現役生活最後のマウンドに上がるはずだった。日本一以上に〝男気〟の最後の勇姿が見られなかったことを残念がったスポーツ紙の広島版は、こぞって1面に「黒田」の大見出しと写真を掲載している。その黒田は5日、初優勝した1975年以来、41年ぶりに広島市内で行われるカープの優勝パレードに参加する予定だ。来年以降の身の振り方について聞かれると、「何をしようかな。仕事がありませんからね。とりあえずは(家族のいる米ロサンゼルスの)家に帰って、野球のことは忘れてゆっくりしたい」と笑った。

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 一方、残されたカープの選手たちは早くも8日から宮崎県日南市で秋季キャンプに突入する。首脳陣は「昨年のこの時期、原点回帰で猛練習を復活させたことが、今季の優勝につながった。当然今年も厳しく、激しくやることになる」と宣言。投手では大瀬良大地、薮田和樹、九里亜蓮、野手では野間峻祥、下水流昂らに加え、今季大ブレークした〝神ってる〟鈴木誠也らが強化指定選手として鍛え直されるだろう。とりわけ野間はシーズン中から、試合前に毎回1時間以上の特打や振り込みを敢行。また、鈴木については、「来季番4サードに抜擢しては」という声も球団内にあり、さらなる大化けが期待されている。

チームの精神的支柱

 そうした中、首脳陣や球団幹部が心配しているのが〝黒田ロス〟である。昨季のカープ復帰以来、黒田は先発投手として白星を稼ぐだけでなく、チームの精神的支柱として陰に日向に大きな影響力を誇ってきたからだ。

 昨年は沖縄キャンプに合流した早々、大瀬良にツーシームを教えたことをはじめ、シーズンが開幕すると様々な形で〝戦う姿勢〟を選手たちに伝えてきた。例えば、阪神戦では自分の頭部近くに投げてきた阪神・藤浪晋太郎を鬼の形相で叱責。「いい姿を見せてもらった。いまの若いやつに欠けているのはああいう姿勢でしたから」と石井琢朗打撃コーチを感激させている。さらに、クライマックスシリーズ(CS)進出のかかった終盤には黒田自ら登板間隔を詰めることを首脳陣に直訴。「誰かがやらないといけない。痛いの痒いの言ってられない」と投げ続けて、投手だけでなく野手をも奮起させた。「黒田さんの姿を見て、もっともっと頑張らなきゃいけないと思った」と興奮気味に話したのは今季〝代理4番〟として活躍した松山竜平である。

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