赤坂英一の野球丸

2016年10月26日

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赤坂英一 (あかさか・えいいち)

スポーツライター

1963年、広島県生まれ。86年に法政大学文学部卒業後、日刊現代に入社。88年より、スポーツ編集部でプロ野球取材を担当。同社勤務のかたわら週刊誌、月刊誌で、スポーツを中心に人物ノンフィクションを多数執筆してきた。最新刊『すごい!広島カープ 蘇る赤ヘル』(PHP文庫、『広島カープ論』増補改訂版)が重版出来で2万部突破。ノンフィクション『失われた甲子園記憶をなくしたエースと1989年の球児たち』(講談社)が第15回新潮ドキュメント賞にノミネートされた。ほかに『プロ野球「第二の人生」 輝きは一瞬、栄光の時間は瞬く間に過ぎ去っていった』(講談社)『最後のクジラ――大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生』(講談社)『プロ野球コンバート論』(PHP研究所)など。

 日本シリーズの取材で滞在していた広島では、毎朝ホテルから出かけるたびに、部屋を掃除してくれるおばちゃんに明るく声をかけられた。「カープが勝ったらええですね。お仕事頑張ってくださいね」と。某スポーツ紙のカメラマンが泊まったホテルでは、カープ関連商品の菓子〈ポテロング牡蠣醤油味〉の差し入れがあったそうだ。それぐらい、広島の街の隅々にまでカープを応援するムードや熱気が行き渡っているおかげもあってか、本拠地・マツダスタジアムでの第1、2戦は、首尾よく日本ハムをくだして2連勝である。

 もちろん、球場のスタンドはファイターズファンが陣取る三塁側2階席を除き、見事なほど赤一色に染まっていた。ラッキーセブンの7回の攻撃前に一斉に赤いジェット風船が飛ばされると、まるで火山の噴火のようにも見える。この異様な雰囲気の中では日本ハムもさぞかしやりにくいに違いない、と思っていたら、栗山英樹監督がグラウンドで報道陣に囲まれた際、「本当に多くのファンの人がカープを愛してるんだな、ということを実感するね」ともらした。「こういう球場で野球をやれるのは、自分たちにとっても幸せだし、ありがたいと感じてるよ」と言うのである。

 シリーズ前の下馬評では、その栗山監督も選手たちも短期決戦の経験が豊富な日本ハムが勝つという見方が多かった。カープ派の私もシリーズの前日、TBSラジオ〈森本毅郎スタンバイ!〉に出演した際には、「カープが勝ちます!」と宣言しながら、「初戦先発の大谷翔平をたたけたら4勝3敗で」と条件をつけざるを得なかった(幸い、その初戦が希望通りの結果となってホッとしている)。

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日本ハムに一日の長がある

 その半面、結果にこだわらず観戦しているプロ野球ファンや一般社会の人々の間では、カープに対する優しい空気が漂っているように思う。冷静に見れば日本ハムに一日の長があるにしても、12球団で最も日本一から遠ざかっているカープがせっかく25年ぶりに優勝したのだから、シリーズもできるだけ頑張ってもらいたいと、いまこの記事を読んでいるあなたもそう思いませんか? 栗山監督の発言は、そんな世間の空気や匂いを敏感に察知していたからに違いない。このあたりはやはり、約20年もテレビ業界でキャスターや解説者をやってきた経験の賜だろう。

 その栗山監督は、12球団で最もマスコミに優しい監督でもある。シーズン中からクライマックスシリーズ(CS)、そして現在の日本シリーズと、試合前には必ず記者たちの囲み取材に対応。球場だけでなく、広島から札幌への移動日だった24日には、飛行機に乗る前に空港でもコメントとネタを提供している。大谷のリアル二刀流のスタイルを確立させた上、11.5ゲーム差を引っ繰り返して優勝し、2連敗スタートとなったシリーズの真っ最中も律儀に報道陣の質問に答える監督さんなど、私の過去30年近い取材歴を振り返ってみてもそんなにはいませんでしたよ。

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