赤坂英一の野球丸

2016年11月14日

»著者プロフィール

 セ・パ両リーグで今季優勝を逃した巨人とソフトバンクが、今月半ば過ぎまで宮崎市内で秋季キャンプを行っている。巨人の宮崎県運動公園、ソフトバンクの生目の杜運動公園は車で約30分ほどの距離にあり、毎年2月は県外から訪れて両チームを見て回るファンも多い。しかし、秋は例年、スターや主力はほとんど不在で、二・三軍の若手・育成選手を鍛え直す地味な練習が繰り返されている。

ソフトバンクで〝一番人気〟

iStock

 そうした中、ソフトバンクで〝一番人気〟を誇っているのが、このキャンプから新たに首脳陣に加わった達川光男ヘッドコーチだ。公園を歩き回るたびに、サインをください、握手してくださいとファンにせがまれる中、「ごめんね、いま練習中なんよ」「わしの手も汚れとるけえ、握手はまたにしてね」と笑いながら頭を下げている姿がこの人らしい。

 とはいえ、いざ練習となると、当然のことながら厳しい言葉が次から次へと口を突く。今月9日には、野手が走者となって一塁から二塁へ走り、これを捕手が二塁で刺す盗塁と盗塁阻止の練習が行われた。この直後、達川ヘッドは「キャッチングがひどい」と指摘。「どこがひどいかいうて、見たらわかるじゃろう。ミットの芯で捕れとらん。じゃけえ、投げるときもしっかり握れんし、送球もブレとる。話にならん」とバッサリ、である。

 達川ヘッドは現役時代の広島の若手だったころ、江夏豊にキャッチングを一からたたき込まれて正捕手の座をつかんだ。私の仕事である文章の執筆に例えると、「キャッチングは五十音じゃ。アイウエオよ、アイウエオ」と強調する。「難しい漢字なら忘れることもある。わからんかったら辞書を引きゃええ。じゃけど、アイウエオがわからんかったら、記事を書こうとしてもどうにもならん。キャッチングがひどいとはそういうことなんよ」と言うのだ。なるほど、わかりやすい。

 もっとも、それでは若手捕手を頭ごなしに怒鳴りつけているかというと、決してそんなことはない。直接指導して、少しでも上達の兆しが見えると、「おお、ええど! 素晴らしい! それ忘れんなよお!」と褒められたほうが照れるほど持ち上げてみせる。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る