WEDGE REPORT

2010年3月29日

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 原子力発電を推進しようという声が、にわかに高まってきた。鳩山政権は、3月12日に閣議決定した「地球温暖化対策基本法案」で原子力発電が対策の中核であることを明記。2030年までの国のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」(経済産業省)の見直し案でも14基の新増設などが盛り込まれた。

 ただ、足元では、アラブ首長国連邦(UAE)でのプロジェクトやベトナムでの第1期プロジェクトなど、日本の海外向け原子力発電ビジネスが相次いで敗退。国内に目を転じても、原子力政策における最大の課題である「核燃料サイクル路線」をこの先、計画通りに推進することができるのかなど、課題が山積している。原子力発電をエネルギー・環境政策の中核に据えるために、見ておかなければならないポイントである、国内の原子力政策の現状をチェックしてみよう。

 「今年は日本の原子力政策にとって、転換点になるかもしれない」。今、原子力産業関係者の間からこんなささやきが漏れている。近く、5年に1度といわれる「原子力政策大綱」の改訂に向けた見直し作業が始まろうとしている。大綱の改訂は2005年以来となるが、「この5年間に起きたことを振り返るとすべてマイナス材料。ポジティブな改訂にはならないだろう」と指摘する原子力産業関係者は多い。

 実際、「日本のエネルギー自給率向上の切り札」(経済産業省関係者)として期待が高い核燃料サイクルを巡る状況は視界良好とは言い難い。その中心となるのが、発電に使用した燃料(プルトニウム)の増殖ができるため「夢の原子炉」と呼ばれる高速増殖炉(FBR)。

 1995年のナトリウム漏れ事故以降、約14年間にわたって運転が停止していた原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市、出力28万キロワット)は、09年度内に運転を再開する方針だった。しかし、長期間停止したことによる配管内部の劣化の問題などが指摘されており、依然地元自治体の了承が得られない状況だ。

受け入れた使用済み核燃料はプールで冷却貯蔵する(日本原燃提供)

 「安全性のチェックはすべて終了し、国の了解も得た。あとは地元の了解だけです」とは、日本原子力研究開発機構(広報担当)の言。しかし福井県の西川一誠知事は、「もんじゅ」再開は安全性確保を前提とするとして、これまで福井県原子力安全専門委員会に諮問を続けていた。本日29日の午前中に開催された審議の場で、ようやく最後の懸案事項であった耐震安全性について、国側の安全評価を「妥当」とする回答が出た。

 これでようやく、地元からも安全確保に太鼓判が押された状況だが、福井県原子力安全専門員会はこれから審議結果の取りまとめに入る上、この結果を踏まえ、西川知事が川端達夫文科相、直嶋正行経産相との3者協議を望んでおり、再開までには、まだ時間がかかるだろう。西川知事は、3者協議の場で、北陸新幹線延伸など、地域振興策の拡充を引き出す狙いもあると見られている。

 こうしたスケジュールから見ても「もんじゅ」の再開が新年度にずれ込むことは必至。さらには大綱で目指す50年のFBR商業炉を実用化するための実証炉の開発についても、緒に就いたばかりで先を見通せる状況にはない。

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