中東を読み解く

2017年1月2日

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トランプ政権、大きなジレンマに

 トルコでは、昨年12月19日にロシア大使が暗殺されるなどこの1カ月で4回もテロが発生したことになるが、大使暗殺と同じ日にはドイツ・ベルリンでトラックによる暴走テロが起き、世界に衝撃を与えた。このテロの犯人のチュニジア人難民は遺言ビデオをISに送っており、背後に同組織が介在していたことは決定的と考えられている。

 ベルリンのテロに続く今回のイスタンブール・テロによって1月20日に正式に始動するトランプ米政権もテロ対策を焦眉の急として最優先課題にせざるを得ないだろう。ISは昨年、分かっているだけでも、16カ国42回のテロで犯行声明を出しており、イラクやシリアの戦場で一段と劣勢になる中、西側でのテロ攻撃を激化させるのは必至とみられている。

 オバマ政権のISへの攻撃を生ぬるいと批判してきたトランプ新政権は対IS空爆をオバマ政権以上に強化することになるだろう。米主導の有志連合は2014年夏以降これまでに、ISの拠点などに1万7000回の爆撃を加え、国防総省によると、戦闘員約5万人を殺害した。米空爆の1日の戦費は1250万ドル(約14億6000万円)だ。

 トランプ新政権は始動直後からこのオバマ政権下でのIS攻撃を上回る空爆強化に踏み切ると見られている。しかし空爆だけでISを壊滅するのは困難であることはこれまでの攻撃が証明しているし、テロを抑止するにも効果がないことは明らかだ。

 アナリストらによると、トランプ政権は間もなくこうした実態を思い知らされることになるが、その時、米軍の戦場での関与を強めるのかどうかが大きな分水嶺になるだろう。オバマ政権は現在、イラクに約6000人の軍事顧問団を、またシリアには約500人の特殊部隊を投入し、対IS戦での助言や訓練を行っている。

 トランプ氏は米軍のイラク侵攻などの干渉を非難し、米軍の紛争地に対する派遣には慎重な姿勢を示しているが、ISを効果的に追い詰め、テロ活動を抑止するためには、最終的には米軍の増派以外に手はない、というのが専門家の見方。トランプ政権はおっつけ大きなジレンマに直面せざるを得まい。

 テロにどう対応していくかという問題の他にも2017年はトランプ政権にとって難しい課題が目白押しだ。中国との貿易をめぐる対立、ロシアのプーチン政権との軍事的協調に踏み切るのかどうか、対ロ防衛をめぐる北大西洋条約機構(NATO)諸国との関係の行方、そして世界の火薬庫である中東への関与をどうするのか。北朝鮮の扱いも難題だ。

 トランプ政権はこうした課題に取り組むに先だって、トゲのように突き刺さったテロとの戦いにまずは振り回されることになりそうだ。

  
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