BBC News

2017年1月18日

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テリーザ・メイ英首相は17日、欧州連合(EU)からの離脱に向けた方針を説明する演説を行い、EU単一市場に残るなら「EUから離脱したことにはならない」と述べ、単一市場から脱退する考えを表明した。

メイ首相は、欧州各国と「可能な限り自由な貿易」を目指すと約束し、EUが脱退する英国を「罰しようと」すれば、「悲惨な自傷行為」になると警告した。

メイ首相はまた、EUとの最終的な合意は、英国の上下両院で採決にかけられると述べた。

野党・労働党のジェレミー・コービン党首は、今回示されたメイ首相の方針には「非常に大きな危険」が伴うと警告した。欧州議会で離脱交渉を担当するヒー・フェルホフスタット氏は、英国が「いいとこ取り」することはできないと、あらためて指摘した。

離脱交渉をめぐる英政府の方針に強い関心が集まるなか、メイ首相は、アイルランドとの往来の自由の維持する一方、EUからの移民を「制御」すると語った。

離脱交渉の正式開始の条件となっているEU基本条約(リスボン条約)50条の発動は3月末までに行われる予定。

メイ首相は、EUや単一市場を「弱体化する」のが目的ではないとしたが、離脱を罰するのは「欧州各国にとって悲惨な自傷行為になるし、友人がすべきことでもない」と述べ、「同時に、悪い合意よりは合意がない方が英国にとってはましだと、はっきりさせておく」と付け加えた。

メイ首相は、EUの加盟国に対する扱いについて忠告し、「力づくで現状を維持し、悪人のように掌握しようとすることで、まさに守ろうとしていたものがバラバラになってしまうのか」、それとも「違いを尊重し、それを愛することさえするのか」、選択が迫られていると語った。

しかし、演説内容で最も注目されていたのは、欧州との貿易関係が離脱後にどのような形をとるのかについてだった。メイ首相は、EUとの合意は「モノとサービスの可能な限り自由な貿易」が実現されなくてはならないとした上で、「明確にしておきたいが、単一市場への参加を提案しているのではない。それでは、どう考えてもEUから離脱したことにはならない」と述べた。

「だからこそ、国民投票で双方が、EUからの離脱は単一市場からの離脱を意味すると、はっきり主張していた」

欧州の指導者らは、離脱後の英国がモノやサービス、労働者の自由な移動を可能にする単一市場へのアクセスを維持しつつ、人の自由な移動を制限することはできないと警告していた。一方で、メイ首相はEUからの移民を抑制すると約束してきた。

メイ首相はさらに、EU加盟国がお互いへの関税を免除し域外には同率の関税を課す、関税同盟の取り決めも変わると指摘。同首相は、同率の関税を域外に課す取り決めに「縛られる」のは望まないとし、代りに英国は、「諸外国と我々独自の包括的な貿易協定をまとめる」と語った。

ほかのEU加盟国に対するメッセ―ジとしてメイ首相は、「我々は今後も、信頼できるパートナー、協力的な同盟国、近しい友であり続ける」と述べた。

「皆さんの商品を買いたいし、我々の商品も売りたい。可能な限り自由な貿易をし、友好関係の継続を通じて我々全員がより安全でより安定し、より繁栄できるように、お互い協力したい」

国民投票時にはEU残留を支持したメイ首相は今回の演説で、EUとの「新しい、対等なパートナーシップ」を呼びかけ、「欧州連合の部分的な加盟でもないし、欧州連合の準加盟でもない。半分は中、半分は外という形ではない」と語った。

「ほかの国がすでに享受している形態は求めない。離脱する時に加盟を部分的に残すことは求めない」

メイ首相の報道官は、離脱交渉の最終的な合意内容をめぐる下院と貴族院の採決について、「拘束力を持つと考えてもらってよい」と述べた。

議会が否決した場合どうするのかと問われた首相報道官は、「いずれにしろ、EUからの離脱が明確になる」と述べるに留まった。

メイ首相はこれまで、交渉戦略について説明してこなかった。交渉期間は最大2年で、加盟国すべてが合意すれば延長が可能。

欧州議会で離脱交渉を担当するフェルホフスタット氏はツイッターで、メイ首相が「明確にした」ことを歓迎した一方で、「しかし、英国がいいとこ取りをし、欧州をメニューで選ぶようなことができる日々は終わった」とコメントした。

単一市場へのアクセスが得られない場合には、「英国の経済モデルの基盤を変更する」とメイ首相が述べたのは、法人税率の引き下げによって企業誘致を図るのを意図しているとみられていることについてフェルホフスタット氏は、「英国を規制のないタックスヘイブン(租税回避地)にすると脅しをかけるのは、英国民の利益を損なうだけでなく、非生産的な交渉戦術だ」と批判した。

フェルホフスタット氏はさらに、国民投票で残留を支持した人々の意見も取り入れるべきだと語った。

コービン労働党党首は、メイ首相が長期的な目標を「より明確にする」必要があるとし、同首相が単一市場について「食べたケーキをまた食べるという、2つの矛盾したこと」を要求していると指摘した。「(単一)市場に依存する国内雇用があり、市場アクセスが確保される合意でなくてはならないと思う。我々はそれに向かって努力する」。

コービン党首はさらに、「非常に大きな危険が伴っている。彼女(メイ首相)が将来の貿易協定について語った時、英国を行列の一番前にするとドナルド・トランプ(次期米大統領)が話した、としか言わなかった。投資家保護的な協定で列の最初に来るというのか。彼女が何を念頭にしているのかよく分からない」と述べた。

自由民主党のティム・ファロン党首はメイ首相の演説を受け、「単一市場から我々を引きずり出すという提案は、国民に示されていなかった。これは民主主義の窃盗だ」と批判した。

英国独立党(UKIP)のポール・ナットル党首は、「ブレグジット(英国のEU離脱)がスローモーションになる」恐れがあるとし、「迅速に実施してほしい」と語った。

スコットランド自治政府のニコラ・スタージョン首相は、単一市場からの脱退は「経済的な破滅」だと述べた。

スタージョン氏は、スコットランドが「それ(EU離脱)と、そうでない違う未来のどちらかを選べる」べきだと述べ、2014年に英国からの独立を問うた住民投票を再び実施する可能性を示唆した。昨年の国民投票では、スコットランド地方の有権者の多数がEU残留を支持していた。

アイルランド政府は声明で、英国が「EUから離脱するものの、新たな緊密な関係を交渉しようとする国としての進め方を堅固にした」と述べた。

さらに、政府は「アイルランド経済に対するリスクや課題をよく認識している」とした上で、「経済的な機会が生まれる可能性」もあると指摘した。

離脱交渉のEU委員会側の責任者、ミシェル・バルニエ氏はツイッターで、「英国が準備でき次第対応できる。通告(50条の発動のことだが)のみが交渉を開始させられる」と述べた。

(英語記事 Brexit: UK to leave single market, says Theresa May

提供元:http://www.bbc.com/japanese/38660267

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