前向きに読み解く経済の裏側

2017年1月23日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

保険も、大数の法則を利用したシステム

 火災保険は、顧客の家の何%が1年間に焼失するか、という過去の統計に基いて支払う保険金の額を予想し、それに保険会社のコストと利益を上乗せして保険料が決まっています。他の保険も、考え方は同じです。それが可能なのは、「皆が一斉に火事になる」という事が考えにくいからです。

 たとえば、顧客が一人しかいない保険会社は、成立しません。大数の法則が使えないため、その顧客が火災に遭った時に保険会社が倒産してしまうからです。営業エリアが狭い場合も、危険です。その地域で大火事が発生した場合に、顧客の多くが被災しかねないからです。その場合には、「他の地域を地盤とする保険会社と顧客を交換する(あるいは相互に支払う保険金の一部を負担しあう)」という手があります。実際にそうした取引が行われているケースは少ないかも知れませんが。

 大災害の場合には、大数の法則が使えません。たとえば大型台風は、滅多に来ませんから、保険会社としては困るわけです。しかし、世界中を見渡せば、大型台風も結構来ていますから、大数の法則を用いる事は可能です。世界中の保険会社が、世界一の保険会社に「再保険」すれば良いのです。

 「大型台風による損害だけを補償してくれる保険」ならば、それほど保険料は高くないので、世界中の保険会社がその保険に加入します。そうすれば、世界中の保険会社は大型台風が来ても倒産せずに済みますし、世界一の保険会社は多くの保険会社から保険料を集めて、大数の法則を活用して稼ぐ事ができるのです。

 もっとも、世界一の保険会社でも大数の法則が使えないので、再保険を拒否しているものがあります。地震保険です。さすがに関東大震災や南海トラフ巨大地震の被害をカバーしてくれる保険会社はありません。そこで、仕方ないので日本政府が再保険に応じています。

 地震保険は、保険料も高いですし、地震の際に支払われる保険金も少ないですが、それも「巨大地震が来ても日本政府が破産しないように」という事だと思えば、仕方ないのかも知れませんね。

  
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