前向きに読み解く経済の裏側

2016年12月21日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 ドナルド・トランプ氏(トランプ次期米国大統領、以下同様)が、在日駐留軍の経費を日本に負担させる、と選挙活動中に述べていたことから、日本がこれを負担させられるのか、といったことが話題にのぼっています。筆者は軍事や外交には詳しくないのですが、頭の体操としては良い教材ですので、学生のディスカッション材料として使っています。今回は、その内容を御紹介しましょう。

駐留経費の追加負担は、せいぜい防衛費の1割

横田基地(iStock)

 米国の予算によれば、在日米軍への支出は55億ドル(6000億円程度)となっています。これは、日本の予算に見る防衛費5兆円と比べると、1割強に相当します。これを日本が肩代わりするか、ということが問題とされているわけです。トランプ氏としては、「日本がこれを払わないなら、米軍は日本から撤退する」と言っているようです。選挙中の発言なので、本気か否かわかりませんが。

 日本にとっては、「米国が日本から出て行った場合、防衛費を6000億円増額して自主防衛する」という選択肢がありますが、「6000億円払って米軍に残ってもらう」選択肢と比べれば、明らかに防衛力が低下します。米軍の穴を埋めるためには、何兆円も防衛費を増額する必要があるのです。つまり、米軍が撤退するか否かと比べたら、6000億円などという金額は、極めて少額で、誤差の範囲だと言っても過言ではありません。

 誤解のないように記しておきますが、6000億円という金額が絶対額として少額だとは決して思っておりませんが、日本の国家予算、日本の防衛費、日米関係を維持することのメリットと維持できなかった場合のデメリットの大きさとの対比で比べれば、無視できるほど小さい、と記しているのです。言い方を変えれば、6000億円をケチって米国と喧嘩別れするような愚かな選択はすべきでない、ということになります。

 つまり、日本としては、「払えと言われれば払う」と決めても何の問題もない程度の話なのです。しかし、払わずに済むならば、払わない方が良いに決まっています。そこで、米国との交渉が必要となるわけです。

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