海野素央の Love Trumps Hate

2017年2月25日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「バノンと戦略的イニシアティブ・グループ(SIG)」です。大統領首席戦略官兼上級顧問であり、国家安全保障会議(NSC)の常任メンバーとなったスティーブン・バノン氏は、ホワイトハウスに戦略的イニシアティブ・グループを立ち上げました。最高の操縦者及び策略家とみられているバノン氏の狙いはどこにあるのでしょうか。さらに、戦略的イニシアティブ・グループの設立によりホワイトハウスにどのような問題が生じるのでしょうか。本稿では、戦略的イニシアティブ・グループを中心にホワイトハウスにおける権力の変化について述べます。

ジョン・ケリー国土安全保障長官(左)、セバスチャン・ゴーカ氏(中央)、スティーブン・バノン氏(右)(Martin H. Simon/Redux/アフロ)

 

ホワイトハウスの極右ライン

 バノン氏とともに鍵を握る人物が大統領補佐官セバスチャン・ゴーカ氏です。ハンガリー系移民で反イスラム色が強いゴーカ氏は、国家安全保障問題を専門にしています。同氏は、以前バノン氏が会長を務めていた極右ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」で国家安全保障問題の編集者でした。2人はブライトバート・ニュースで上司と部下の関係だったのです。

 ゴーカ氏によれば、同氏とバノン氏に加えて戦略的イニシアティブ・グループのメンバーには、元GM及びマイクロソフトの最高財務責任者(CFO)クリス・リデル氏、ゴールドマンサックスの幹部ディナ・パウエル氏、ボルチモアの不動産開発業者リード・コーディッシュ氏がいます。戦略的イニシアティブ・グループは、ホワイトハウスの中のシンクタンクという位置づけで、米国内の製造業、インフラ整備、退役軍人の問題及びサイバー攻撃などに関する政策提案を行います(図表)。

 いずれもトランプ大統領の最優先課題です。戦略的イニシアティブ・グループは主として内政問題を扱うのですが、ゴーカ氏はサイバー攻撃を担当し国家安全保障問題も取り上げると米メディアに語っています。バノン・ゴーカ両氏の極右ラインがホワイトハウスで勢いを増しています。

バノンによるホワイトハウスの私物化

 「トランプホワイトハウスの組織上の問題点」で説明しましたが、ドナルド・トランプ大統領は、バノン氏、大統領首席補佐官ラインス・プリーバス氏及び大統領上級顧問ジャレット・クシュナー氏の3人を同格に置くというスリートップの形をとりました。ところが、前述しましたようにバノン氏は国家安全保障会議の常任メンバーになり、しかも戦略的イニシアティブ・グループを設立したのです。これにより、バノン氏は双方からの情報の取得が可能になり、同氏に権限が集中するのは明らかです。それに対して、プリーバス氏の権限の低下は否めません。

 仮にトランプ大統領が国家安全保障会議のメンバーからバノン氏を外した場合、戦略的イニシアティブ・グループと国家安全保障会議の権力争いは回避できません。その背景には、安全保障問題を取引材料にして経済で実利をとるトランプ大統領の交渉の仕方があるからです。さらに、戦略的イニシアティブ・グループの国家安全保障会議に対する優位性を確保し、ホワイトハウスの私物化を狙うバノン氏の存在があるからです。

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