2024年12月21日(土)

韓国の「読み方」

2017年3月6日

 金正男氏殺害事件は、マレーシア政府が北朝鮮大使を「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」として国外追放する事態に発展した。東南アジアは友好国の多い重要な地域であるだけに、北朝鮮の被る外交的ダメージは非常に大きい。なぜこんなに割の合わない事件を起こしたのか、謎は深まるばかりだ。(参考:「金正恩は金正男暗殺事件の波紋に驚いた?」「金正男暗殺事件がもたらす北朝鮮と東南アジアの外交危機」

 これまでも繰り返し指摘してきたが、事件を巡って判明していることは多くない。特に、北朝鮮側の意図に関しては推測だけだ。そして、その中で異彩を放つのが、北朝鮮の元駐英公使で韓国に昨年亡命したテ・ヨンホ氏の証言である。興味深い話が多いのだが、残念ながら信ぴょう性に疑問を持たざるをえない内容が少なくない。控えめに言うならば、「一部のメディアによって過大評価されている」というのが多くの専門家の見立てである。

テ・ヨンホ氏(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 私は昨年9月に「心配募る朴大統領の北朝鮮観 韓国発の北朝鮮情報は気を付けて見るべき」という記事を書いた。今回の事件に照らして、改めて韓国発情報の「あやうさ」を考えてみたい。

説得力ある証言もあるけれど…

 事件の起きる前ではあるが、私は1月末に出演したBS番組でテ・ヨンホ元公使の証言へのコメントを求められた。米メディアとのインタビューで、トランプ政権発足に関して「金正恩委員長は米新政権との間である種の和解を結ぶ好機だととらえている」と語ったのだという。私は思わず「眉唾」と言ってしまった。生放送で言い過ぎたかなとは思ったものの、やはり疑わしさはぬぐえない。

 落ち着いて考えてみてほしい。北朝鮮にとって対米関係はもっとも重要で機微な外交問題である。駐英公使クラスが口をはさめる問題ではないし、トップシークレットであるはずの対米外交の方針が在英大使館に流れてくることなどありえない。日本だったらどうだろうと考えてみれば、すぐに分かることである。


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