シリーズ「待機児童はなぜ減らないのか?」

2017年5月18日

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小林美希 (こばやし・みき)

労働経済ジャーナリスト

1975年生まれ。株式新聞社、毎日新聞エコノミスト編集部を経て2007年2月からフリーのジャーナリスト。「ルポ看護の質〜患者の命は守られるのか」「夫に死んでほしい妻たち」(朝日新書)、(岩波新書)「ルポ保育崩壊」(岩波新書)と「ルポ母子家庭」(ちくま新書)「ルポ“正社員”の若者たち」(岩波書店)、「看護崩壊」(アスキー新書)、「ルポ職場流産」(岩波書店)、「ルポ産ませない社会」(河出書房新社)など

 東京23区内に住む池田理子さん(仮名、32歳)は、不条理さを感じずにはいられない。大手電機メーカーの正社員として働き、29歳で出産。間もなく第2子も生まれる予定だ。「子どもが0歳のうちは育児休業を取って一緒にいたい」と、1歳児クラスから保育園に預けて職場復帰しようと思っていたら、あっさり待機児童になってしまった。

(iStock)

 もともと理子さんは、子どもを授かったら育児休業を取ろうと思っていた。自分の母親が30年前の当時としては珍しく、理子さんを出産後に1年の育児休業を取って仕事を続けていたからだ。理子さんは母親の後ろ姿を見て、「福利厚生がしっかりして、きちんと育休が取れるような会社を選んで努力して就職活動をして内定を得た」という。会社も子育てに理解があったのだが、予想外の展開となったのは“保活”の激化だった。

 周囲の女性たちは育児休業を取っても早く切り上げ、最も入園しやすいと言われる4月に0歳児クラスから入園することで、保育所の席の獲得を確実なものにしていた。もしくは、自治体が行う入園審査の利用指数のポイントアップを狙い、年度途中でも職場復帰して認可外保育所に子どもを預けている人ばかり。

 理子さんの住む地域では、1日でも早く認可外に預けている人が入園が有利になる。いつ育休を切り上げたらいいのか。そんなことを考えると、自分は保育所に入ることができるのかどうかが気になって、せっかくの新生児との新しい生活も十分に味わうことも難しくなり、毎日のように“保活”合戦の状況に戦々恐々としなければならない。とはいえ、「勤務先は育児休業を最大3年も取っていい。子どもは10月生まれ。もし年度始めに預けるとなると、まだ生後6か月。もっと子どもといる時間をもちたい」と、1年半の育児休業を取り、1歳児クラスの4月入園で預けて職場復帰しようと計画した。

 区役所では、保育所ごとに利用指数が何点で入園できたかのボーダーラインを教えてくれる。ひとくちに認可保育所といっても、公立や私立があり、0歳児保育があるのか、延長保育があるかないか、何時まで延長保育を実施しているか、夕食は出るのか。駅から近いか、園庭はあるかなど、さまざま。人気のある保育所の入園の倍率は必然的に高くなる。すると、点数の競争になって利用指数が高くなければ入園できなくなってしまう。理子さんが入園の申請書類に書ける希望園は4つ。駅や自宅から近い公立で0歳児保育や延長保育を実施している保育所を4つ書いて申請したら、結果、「不承諾」の通知が届いた。

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