シリーズ「待機児童はなぜ減らないのか?」

2017年5月18日

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小林美希 (こばやし・みき)

労働経済ジャーナリスト

1975年生まれ。株式新聞社、毎日新聞エコノミスト編集部を経て2007年2月からフリーのジャーナリスト。「ルポ看護の質〜患者の命は守られるのか」「夫に死んでほしい妻たち」(朝日新書)、(岩波新書)「ルポ保育崩壊」(岩波新書)と「ルポ母子家庭」(ちくま新書)「ルポ“正社員”の若者たち」(岩波書店)、「看護崩壊」(アスキー新書)、「ルポ職場流産」(岩波書店)、「ルポ産ませない社会」(河出書房新社)など

正社員夫婦で点数は満点のはずなのに、まさかの「不承諾」

 正社員夫婦で点数は満点のはずなのに、まさかの「不承諾」通知。慌てて東京都が設置する認証保育所(保育士の配置基準が認可保育所の6割でいいなど、規制緩和されている施設)や認可外保育所を探したが手遅れだった。理子さんは、本当に利用したいと思った保育所を希望順に1位から4位までを書いて出した。「もしかすると、5位、6位のところを書けば通っていたのかもしれない。もしも育児休業を前倒しして子どもを生後6か月で預ければ、1~4位でも入れたかもしれない。なぜ、当たり前のように育児休業をとると、保育園に落ちるのか」と悔しい思いがした。

 理子さんは、2人目も欲しいと考えていたため、あらかじめ0歳児保育もあり、延長保育も実施している保育所を選んでいた。実家は遠く頼れないため、何かあった時には必要な条件と考えていたからだ。待機児童となり、やむなく育児休業を延長することとなった。厚生労働省がまとめた市区町村の保育所の申し込み状況によると、2016年4月1日時点で、「育児休業中の者」は7229人となっている。このなかに、理子さんもいたことになる。

 夏になっても認可保育所に空きが出る気配はなく、10月になってようやく認証保育所の空きが出て子どもを預けることができ、職場復帰を果たした。認証保育所からは「午前9時から午後5時までなら預かることができる」と条件が提示され、いわれるがまま従った。育児短時間制度を利用しても、送り迎えはギリギリの毎日。午後5時ぴったりにお迎えに行くには、職場から駅まで小走りで向かって1本でも電車に乗り遅れてはアウトだ。駐輪所にとめてある自転車がスムーズに出せなくてもアウト、という冷や冷やする毎日となった。

 この春、公立の認可保育所に転園できたが、もともと希望順位が4位より低かった0歳児保育がなく、延長保育もない保育所だ。「最初からこの保育所を選んでいれば入れたのかもしれない。きちんとボーダーラインを見て確実なところを書かなかった自己責任と言われても仕方ないのだろう」と肩を落とすが、「育児休業を取ったから“保活”で負けた」という悔しい思いが拭いきれない。

 厚労省「2015年度 雇用均等基本調査」から、調査を行った前年度1年間に育児休業を終了して復職した者(育児休業後復職者)の、育休を取った期間別の割合を見ると、育休前倒しの傾向がうかがえる。女性の場合、2012年度と2015年度を比べると、「10か月~12カ月未満」が33.8%から31.1%に減っている。一方で、「3か月~6カ月未満」が6.9%から7.8%へ、「6か月~8か月未満」が8.2%から10.2%へと増加。さらに「12カ月~18カ月未満」が22.4%から27.6%に増えている。

 この結果から、子どもが生まれてから約1年の育休というスタンダードな期間が減って短期化していることが分かる。そして、待機児童になって育休延長する例が増えているとも読み取れないだろうか。なんのための育児休業制度なのか。育休は親にとっての子育ての権利だけではなく、子どもにとっての親に育ててもらえる権利ともいえないか。待機児童問題で親子の時間が奪われては本末転倒。厚労省は今後、育児休業を延長しているケースを待機児童にカウントする方針だが、抜本的に預け先が足りないことを前提に対策を組み立てる必要がありそうだ。

 

  
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