政治・経済

2017年6月27日

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真田康弘 (さなだ・やすひろ)

早稲田大学地域・地域間研究機構客員次席研究員/客員講師

早稲田大学地域・地域間研究機構客員次席研究員・研究院客員講師(法政大学大原社会問題研究所客員研究員兼任)。神戸大学国際協力研究科博士課程前期課程修了(修士・政治学)。同研究科博士課程後期課程修了(博士・政治学)。大阪大学大学教育実践センター非常勤講師、東京工業大学社会理工学研究科産学官連携研究員、法政大学サステイナビリティ研究教育機構リサーチ・アドミニストレータを経て、2014年より現職。専門は政治学、国際政治史、国際関係論、環境政策論。地球環境政策や漁業資源管理など幅広く研究を行っている。著書に『A Repeated Story of the Tragedy of the Commons: A Short Survey on the Pacific Bluefin Tuna Fisheries and Farming in Japan』(早稲田大学、2015年)、その他論文を多数発表。
 

 では何が問題なのか、まずこれまでの五輪の取り組みについて簡単に触れたい。オリンピック・パラリンピックでは00年のシドニー大会で「サステナブル(持続可能性)」というコンセプトが導入されて以来、環境への配慮が大会を重ねるごとに重視されている。なかでもロンドン大会は「史上最も環境に配慮した大会」が目指され、水産物についても、全て持続可能な漁業によって調達されていることや、天然水産物に対するエコラベル「MSC」認証水産物の調達が推奨された。

 リオ大会でもこのレガシーは継承され、MSCや養殖水産物エコラベルの「ASC」認証を受けた水産物の調達を優先するとともに、環境に負荷のある資源は使用しないこと等を水産物調達コードに定めている。五輪でのこうした取り組みを契機として、イギリスでは年間2億食以上の「持続可能な水産物」に対する需要が誕生した、とIOCが発表している。

 日本でも東京五輪の開催を見据え、持続可能な水産物へのシフトが始まっている。イオンは17年4月、連結子会社を含む全ての総合スーパー及び食品スーパーで、MSC、ASCの流通・加工認証の100%取得を目指すとともに、主要な全魚種で持続可能な裏付けのあるプライベートブランドを提供する目標を発表している。

 西友も16年11月、オーシャン・アウトカムズ(O2)と海光物産株式会社が立ち上げた日本初の漁業改善プロジェクト「東京湾スズキ漁FIP」を支援、17年5月より関東の主要店舗でFIPスズキの販売を開始している。FIP(漁業改善プロジェクト)とは、生産者がNGOなどの協力の下、漁業の改善に向けた取り組みである。とりわけ小売業界での変革は既に始まっているのだ。

透明性を欠く
「ガラパゴススタンダード」

東京五輪の水産物の調達基準はロンドン五輪、リオ五輪から後退したため、国内外で批判の声が高まっている(写真・AP/AFLO)

 ところが発表された五輪水産物調達コードは、その流れを加速させるどころか、冷や水を浴びせるものとなった。

 このコードではまず、水産物調達は、①漁獲や生産が適法に行われ、②科学的な情報を踏まえ計画的に水産資源の管理が行われた漁業及び養殖業により漁獲、生産されているものから行われなければならないと定める。

 続いて、「MEL、MSC、AEL、ASCによる認証を受けた水産物については、上記を満たすものとして認める」と規定している。一見問題なさそうに見えるが、死角は細部に潜む。

 「MEL(マリン・エコラベル・ジャパン)」は07年に大日本水産会が始めた天然水産物の認証プログラムであり、「AEL(アクアカルチャー・エコラベル)」は「養殖エコラベル」の略で、14年に一般社団法人「日本食育者協会」が設けた養殖水産物の認証プログラムで、双方ともに日本生まれの水産認証制度である。

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