政治・経済

2017年6月27日

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真田康弘 (さなだ・やすひろ)

早稲田大学地域・地域間研究機構客員次席研究員/客員講師

早稲田大学地域・地域間研究機構客員次席研究員・研究院客員講師(法政大学大原社会問題研究所客員研究員兼任)。神戸大学国際協力研究科博士課程前期課程修了(修士・政治学)。同研究科博士課程後期課程修了(博士・政治学)。大阪大学大学教育実践センター非常勤講師、東京工業大学社会理工学研究科産学官連携研究員、法政大学サステイナビリティ研究教育機構リサーチ・アドミニストレータを経て、2014年より現職。専門は政治学、国際政治史、国際関係論、環境政策論。地球環境政策や漁業資源管理など幅広く研究を行っている。著書に『A Repeated Story of the Tragedy of the Commons: A Short Survey on the Pacific Bluefin Tuna Fisheries and Farming in Japan』(早稲田大学、2015年)、その他論文を多数発表。
 

 日本では多くの地域・漁業で「資源管理計画」(天然漁業の場合)と「漁場改善計画」(養殖業の場合)という自主的な取り組みを行っており、これによって有効な資源管理が行われている。したがって「資源管理計画」「漁場改善計画」を策定して順守している事業者を調達対象に含めるべきだと主張し、これが受け入れられた。

 水産庁側の説明によると、現在全国では1800を超える「資源管理計画」があるとされ、これらにより日本産水産物の9割が五輪で調達可能なものとしてカバーされる。

 しかし、当の水産庁が公表した資源評価ですら、半数の魚種は資源状態が低位にある。日本の水産物の9割もが持続可能であろうはずがない。「資源管理計画」については、16年12月に公表された自民党の行政改革推進本部がまとめた事業レビューでも「資源状態の評価基準として不十分な漁獲量や魚価などによる評価・検証が計画の8割近くに及ぶ」と批判を受けている。

 自民党からの批判などを受け鳥取県は「資源管理計画」の評価検証を行い、その報告書が公開されているが、ここで評価対象とされた14の資源管理計画のうちの4つは「3か月間のあいだ、週1日休む」というものでしかなく、この「週一休漁」の他に漁獲サイズ規制等を加えたものを加えると8つと過半数を超える。市場の休みに合わせ漁を控えるだけで「資源管理計画」として成立してしまうのである。週一の休漁に合わせてサイズ規制を行った小型底引き網漁業者のうち自己評価を寄せた8件のうち6件は「効果を感じない」と返答している。

 そもそも「資源管理計画」「漁場改善計画」は一般に公表すらされていない。ここでも欠けているのは、透明性と外部への説明責任である。

 調達方針では、国内水産業の振興のために国産水産物を優先的に調達するとしている。しかし乱獲により衰退した水産業の現状を追認し、透明性と説明責任を欠いた水産物を調達することは、長期的には国内水産業の振興どころかさらなる衰退を招くだけである。

写真を拡大 (出所)農林水産省「漁業・養殖業生産統計」を基にウェッジ作成
(注)漁業・養殖業の国内生産量の推移

 こうした「国産なら何でもあり」の基準については「(資源管理に)努力した人が報われない」(小林史明衆院議員)、「国産なだけで良品とみなす神話は打破すべき」(小泉進次郎衆院議員)と一部の議員からも疑問の声が上がり、「役所の中にすら懸念の声がある」と報道されている(みなと新聞2月20日・3月17日)。また、「ロンドン、リオの調達基準から後退し、憤りを感じている」(IOC関係者)という声以外に、海外の関係者からも批判の声が上がっている。

 20年まで3年の時間が残されており、まだ改善を行う時間は十分残されている。そこで以下若干の提案を試みたい。

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