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2010年10月20日

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世間を賑わせた尖閣諸島沖での中国漁船問題やレアアースの対日禁輸措置は、
チャイナ・リスクを再認識させるとともに中国頼みの脆弱な日本経済の姿を露呈させる結果となった。
アメリカに目を転じれば、年末にかけて一段と円高が進むリスクが目白押し。
思い切った財政支出や金融緩和策をとらなければ、景気の二番底もありうる。

 9月24日、尖閣諸島を巡る日中間のいざこざで、日本は中国に膝を屈した。海上保安庁の巡視艇に衝突してきた中国漁船の船長を、那覇地検が処分保留の名目で釈放した。地検独自の判断と信じる者は誰もいまい。日本の立場がヤクザに絡まれた、喧嘩の弱い堅気のようなものだったのは言うまでもない。

 南シナ海を我が物顔に振る舞う中国に、顔をしかめていたベトナムやフィリピンなど東南アジア諸国連合(ASEAN)の国々は、肩を落としている。米国の中国を見る眼差しは厳しさを増している。世界貿易機関(WTO)加盟の最大の受益国だったはずの中国が、レアアース(希土類)の事実上の対日禁輸に踏み切ったからだ。

 名目国内総生産(GDP)で中国が日本を抜いた2010年は、中国がアロガント(傲慢)で国際秩序を顧みない大国として振る舞い出した年として、記録されるだろう。それはリーマン・ショック後、世界経済の牽引役として称賛を浴びてきた中国像が、悪役に転換することを意味する。そうした転換は興味深いが、我々は歴史家ではない。

 今回の日中衝突が、ふらつきだしている足元の景気に及ぼす悪影響を見極めなければならない。まず、中国ビジネスのもたつき。日本企業は今年に入って対中進出に一段とアクセルを踏んだ。米欧の景気が振るわないなら、中国などアジアで稼ごうという戦略が、鮮明になっていた。事実、中国向けは日本の輸出を牽引してきた。ところが、こうした中国頼みの企業経営や経済運営は、根っこから揺さぶられた。

中国の嫌がらせ

 レアアースの対日輸出停止が日本のハイテク産業をパニックに陥れたばかりではない。中国を部品などの供給拠点にしていた日本の製造業は、空港で全品検査という嫌がらせを受け、サプライチェーン(供給網)がズタズタになった。市場では中国ビジネスの比率の高い企業が、「チャイナ・リスク銘柄」として売りたたかれた。反対に、中国産レアアースなしにハイテク製品を作る技術のある企業は、「チャイナ・フリー銘柄」として評価された。

 チャイナ・リスクには、準大手ゼネコン・フジタの社員のように、中国の軍によって突然、身柄を拘束されたケースもある。違法行為を犯した船長を釈放したのに、恐らく濡れ衣と思われるフジタ社員を解放しないのはどうかしている(10月9日、最後の1名がようやく解放された)。などと筋論を言ってみても、両国の力の格差を見透かしているためだろう、中国当局は耳を貸さない。こうなると、中国の現地拠点で働く日本人は、潜在的な「人質」とさえいえる。

 百貨店、家電専門店、旅館、ホテルなども例外ではない。ビザ(入国査証)の条件緩和で、中国からの観光客増を当て込んでいたからだ。事実、今年1~8月の中国人来日客は円高にもかかわらず、104万人と前年同期を38万人強も上回った。どこの観光地に行っても中国人団体客を目にするはずである。百貨店や家電専門店は国内消費が振るわないなか、中国人が使うカードである「銀聯カード」での買い物に頼る度合いを高めていた。

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