BBC News

2017年11月2日

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クリス・ベル記者、BBCソーシャルニュース取材チーム

トランプ米政権のジョン・ケリー首席補佐官は10月30日、米国の南北戦争の原因は、妥協できなかったことだと述べた。

米フォックス・ニュースに出演したケリー将軍は、南部連合の記念碑や銅像などを撤去する取り組みについて話していた。

南部連合の銅像は米国で。銅像を米国の奴隷制の歴史を思い起こさせる不快なものだと考える人もいれば、銅像の撤去を南部連合の文化や歴史を抑圧する試みだとみる人もいる。

ケリー氏の発言を機に、ソーシャルメディア上では賛否両論が沸き起こった。フレデリカ・ウィルソン米下院議員やビル・クリントン元大統領夫妻の娘、チェルシー・クリントンさん、公民権運動の指導者マーティン・ルーサー・キング牧師の娘、バーニース・キングさんなどが批判の声を上げた。

チェルシー・クリントンさんは、「ケリー将軍、奴隷制に関して『妥協』はない。絶対に。憲法の元々の5分の3妥協案は忌まわしいものだった」とツイートした。

ウィルソン議員は、「うーん、奴隷制と人間の自由との間で、正しい『妥協』とは一体何?」とツイートした。

キングさんは、「白人至上主義者たちが、奴隷制存続のために戦うことを勇気あることだとみる風潮がある。そんな状況でのこの発言はことさら、無責任で危険だ」とツイートした。

ケリー将軍は、南部連合軍のロバート・E・リー将軍を「自分の国を捨てて、自らの州のために戦った尊敬すべき人」だと呼び、「歴史には、良かったこともあれば、あまり良くなかったこともある」と話した。

「今の社会が認める善悪の基準で100年、200年、300年以上前にさかのぼり、『クリストファー・コロンブスがやったことは誤りだった』などと言えば、それは社会として間違いだと思うし、個人としてはもちろん間違いだと思う」

「妥協する能力が欠けていたため、南北戦争が起きた。双方の誠実な人たちが、自分の良心に基づき、それぞれの立場を主張したのだ」

リー将軍は「奴隷制存続のために戦った」

ホワイトハウスのサラ・サンダース報道官は30日、ケリー氏の発言は不快で史実に基づいていないのではないかという記者の指摘を退けた。

報道官は「歴史が好きではないからといって、歴史を消して、なかったことにはできない」と述べ、メディアが「人種問題をはらんだ分断されたホワイトハウス」を印象付けようと、報道を作り出していると非難した。

これまで複数の賞を受賞し 、米ケーブルテレビ局HBOの「ザ・ワイヤー 」や「トレメイ 」などに出演した黒人俳優のウェンデル・ピアース氏は、「連中は私の祖母を強姦し、おじを集団リンチし、家族を引き裂いた。おかげで我々は、自分たちの歴史を失った。それに名誉と妥協を見出せと?」と書いた。

リー将軍の遠い子孫にあたるロブ・E・リー牧師は米紙ワシントン・ポストに対し、ケリー氏は「奴隷制存続のために戦った人間に敬意を抱いている」と述べた。

黒人の歴史家タナハシ・コーツ 氏は連続ツイートで、「国を守る責務のある人が、守ろうとしている国を根底から理解していないのはショックだ」と述べた。

コーツ氏は、ケリー氏が「リー将軍を名誉ある人間だと称えるのは悲しい。子供が、自分の疲れ切った怠け者の父親のことを、実は秘密の任務を行っているスパイだと言い張るみたいだ」ともツイートした。

コーツ氏は、「リー将軍を尊敬すべき人だと称えるのは悲しい。子供が、自分の疲れ切った怠け者の父親のことを、実は秘密の任務についているスパイだと言い張るみたいだ」ともツイートした。

南部諸州は1860年~1861年にかけて合衆国から脱退し、その後1865年まで内戦は続いた。これに先立ち、奴隷制存続の是非をめぐる南北対立は何十年間もかけて高まり、奴隷制に明確に反対するエイブラハム・リンカーンが1860年、大統領に当選していた。

3人の著名な南北戦争研究者は今年5月、BBCに対し、奴隷制が南北戦争の主な原因だったとの見方で、研究者の通説は一致していると話した。

米歴史協会のジム・グロスマン氏はBBCに対し、「この答えに満足しない人たちは、南北戦争の原因はもっと別の物だったと思いたがっている」と指摘する。

ソーシャルメディアでは大勢が、北部と南部双方が開戦を避けようとしていたと指摘した。

サミット ・サーカー 氏はツイッターで、「不完全なリスト。①5分の3妥協案(1787年)、②ミズーリ妥協 (1820年、1821年)、③1850年協定 、④カンザス・ネブラスカ法 (1854年)」と妥協の例を挙げた。

ケリー氏の発言と、バージニア州シャーロッツビル衝突後のトランプ大統領発言に、類似性があるという批判も多く上がった。

シャーロッツビルでは8月、白人至上主義者の車が集会に反対する人々に突っ込み、女性1人が死亡したほか、複数の人が負傷した。

トランプ大統領は当時、衝突の責任は「色々な側」にあると発言したため、内外から広く非難された。

マット・マクダーモットさんは、「ホワイトハウス主席報道官は、南北戦争の責任はまさに色々な側にあると言った」とツイートした。

(英語記事 John Kelly: US Civil War caused by 'lack of compromise'

提供元:http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-41828261

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