ペコペコ・サラリーマン哲学

2009年2月27日

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 私は61歳で取締役を自分の意思でやめ、大学教員と経済・金融・経営評論家の道に入りました。授業や講演の際には、必ず事務所の電話番号をお知らせし、「どんなことでも聞きたいことがあったら、ここへお電話ください」とお話ししてきました。

 これまでたくさんの方が訪ねてくださり、悩みを打ち明けていきましたが、もっとも多かったのは、「上司と意見が合わないので、激論を闘わせたい。どうしたらいいか」というものでした。30人くらいは、この悩みだったと思います。

役員だって社長だってえらくない

 何年か前、ある一部上場企業の役員の方が、私を訪ねて、「トップとけんかしたいのですが、どうすればいいでしょうか」と言いました。私は次のようにお話ししました。

 「それはやめたほうがいいです。上司には、ペコペコしたほうがいい。あなたの上司には、社長、副社長、専務の三人の方がいるようですが、彼らはあなたの人事権を握っています。そんな人にケンカをしかけるなんて言語道断です。得するものは何もない。だから、これからは毎日家庭に早く帰って奥さんを大事にし て、子どもと一緒に日曜日はおにぎりを持って、朝早くからハイキングに行って昼までには帰ってくるといいです。会社ではいかにも一生懸命仕事をしているよ うな『ふり』をして過ごしなさい」

 そして、その半年後、再びその人が訪ねてきました。

 「社長、副社長、専務の3人がいっぺんに退社しました。ありがとうございました。おっしゃるとおりにして本当によかった」

 こういうことは、めずらしいことではありません。

 過度な正義感をもって、自分のクビをかけて上司と一戦交えても、部下に勝ち目はありません。そのときは、自分で自分を褒めていい気持ちになっても、自分がクビになってしまっては元も子もないのです。

 「上司と戦いたい」という人は、どこかで「自分のほうがえらい」と思っていないでしょうか。先の役員の方にも、私はこう言いました。

 「あなたは一部上場企業の役員である自分がえらいと思っていませんか?まったくえらくないと私は考えます。もっとえらい人は世の中にたくさんいます」

 社長だってえらくないのです。オーナー企業を除けば、社長は従業員の行き着いた先でしかありません。社長ですらそうなんですから、副社長や専務、常務、部長、課長が、本当の意味でえらいはずがありません。

 人間は老いも若きも、自分ではあまり気づかない「過度のプライド」をもっているものです。「この仕事は自分しかできない」というような気持ちがあるでしょう。でも極論すると、大部分の仕事は、自分以外のほかの誰にだってできると思っていたほうがいいのです。

 何事においても大事なことは、自分を過信しないことです。私たちは往々にして、「自分は大したものだ」と思いがちです。

 「そんなことはない」と思う人もいるでしょうが、放っておくと、人は誰でも自分で自分を大したものだと思ってしまうのです。自分を過信することは、自分を本当の意味で大事にすることにつながりません。

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