海野素央の Love Trumps Hate

2018年1月26日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「2年目のトランプ」です。就任1年目の総括として「フェイク(偽)ニュース大賞」を発表したドナルド・トランプ米大統領は、2年目に入ってもメディアに対する攻撃の手を緩める気配はまったくありません。トランプ大統領は、相変わらず「フェイク戦略」を展開しています。

 その一方で、トランプ大統領の精神的安定さに欠けた発言を懸念するメディアや医師たちから、精神面の健康診断を求める声が上がっています。本稿では、まずフェイクニュース大賞を読み解き、次に同大統領の主治医とホワイトハウスの記者団との激しいやり取りに焦点を当ててみます。そのうえで、2年目の同大統領の懸念について指摘します。

(Alex Wong/Getty Images

フェイクニュース大賞

 トランプ大統領は17日、「フェイクニュース大賞」を合計11件発表しました。構成が、トップ10プラス1になっている点に注目です。

 第1位は、米ニューヨーク・タイムズ紙でノーベル経済学者ポール・クルーグマン氏が2016年米大統領選挙後に「経済は回復しないだろう」と予測した記事でした。確かに、この記事は誤っていました。現在、ダウ平均は史上最高値を更新しており、失業率も低く、経済は好調です。そこで、トランプ大統領は、この記事を利用して強い経済をアピールしたのです。

 トランプ大統領は翌日18日、東部ペンシルベニア州ピッツバーグにある企業で演説を行い、アフリカ系、女性及びヒスパニック系における失業率の低さを強調しました。そこにも狙いがあります。アフリカ諸国並びにハイチを「屋外便所」と呼んだと報じられ、しかもセクハラ疑惑が再燃しているので、非白人と女性の低い失業率を用いて批判を封じ込めようとしたのです。

 米ABCニュースとワシントン・ポスト紙が行った共同世論調査(2017年1月15日-18日実施)によりますと、トランプ大統領の支持率は36%です。ところが、ロイター通信とグローバル世論調査会社イプソスの共同世論調査(同年1月12日-16日実施)の結果をみますと、同大統領の雇用政策に対する支持率は50%、経済政策は49%で共に全体の支持率よりも高いです。同大統領にとって、経済と雇用は間違いなく生命線になっています。フェイクニュース大賞第1位に経済記事を載せた理由はここにあります。

ロシア疑惑を払拭できないトランプ

 トップ10には、ロシア疑惑に関するニュースが4件も入っており、11番目でトランプ大統領自身が「米国民に対する最大のでっち上げ。ロシアとの共謀はない!」と反論しました。5日に販売されたトランプ政権に関する暴露本『炎と激怒』の中で、スティーブ・バノン元首席戦略官兼大統領上級顧問がロシア疑惑に関して注目に値するコメントをしたからでしょう。

 側近中の側近であったバノン氏は本書で、ドナルト・トランプ・ジュニア氏が、ニューヨークのトランプタワーで面会した「ロシア政府の手先と思われる女性弁護士らを、26階にある父親の執務室に連れていったんだ。そうでない可能性なんてゼロだ」と、かなり自信に満ちた口調で語っています。さらに、同氏はマネーロンダリング(資金洗浄)でジュニア氏とトランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー氏が、司法取引に応じることになれば、大統領が追い詰められると予測しています。トランプ大統領は、これらの発言を意識したのでしょう。フェイクニュース大賞の11番目で、自身の言葉で同疑惑を全面否定しました。それほどロシア疑惑は、同大統領にとって精神的重荷になっているわけです。

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