使えない上司・使えない部下

2018年8月24日

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吉田典史 (よしだ・のりふみ)

ジャーナリスト・記者・ライター

ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年から、フリー。
主に、人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。『悶える職場』(光文社)、
震災死』『あの日、「負け組社員」になった…―他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)『封印された震災死』(世界文化社)など。

 今回は、連載の第1回目の記事『パワハラ上司に「この野郎!黙れ!」 手帳をぶつけて応酬』に登場していただいた男性にあらためて取材を試みた。1回目の記事ではご本人の意向もあり、匿名だった。今回は、実名で紹介させていただくことで了解がとれた。

(Jarin13/Gettyimages)

 北海道の函館市で行政書士事務所を経営する行政書士の嶋田不二雄さん(57歳)で、遺言、相続、内容証明、任意後見、契約書作成、法人設立、自動車登録、各種許認可申請など幅広い業務を扱う。

 嶋田さんは、かつて外資系の大手損害保険会社の支社に勤務していた時、上司に対し、手帳をぶつけた経験がある。今回は、そのことをもう一度振り返っていただき、上司と部下の関係についての考えをお聞きした。

「俺が怒ったら、こんなもんじゃない!」

 15年以上前のことですが、今振り返ると、突発的な行動とはいえ、私の行動は大人げなかったと思います。そのようなことを頻繁にしてきたわけではなく、あの時だけです。

 前々から、あの上司(支社長で、40代半ばの男性)に対しては思うことがありました。ふだんから、営業部の私たち10数人の社員を見下すようなところがあったのです。本社(東京)にいる役員にはずいぶんとへつらうのですが、部下である私たちには「お前ら」という物言いをします。支社には、15人ほどの社員がいましたが、そのほとんどが陰では上司に対し、不満を言っていました。

 上司は大きな声で怒鳴ったり、小ばかにしたりもします。「俺が本気で怒ったら、こんなもんじゃない!」と脅すようなことも、よく言っていました。今で言えば、パワハラでしょうね。

 私が手帳をぶつけたあの日も、10人ほどが参加した会議で「お前ら…」と突然、怒鳴り始めたのです。そして、脅すような物言いになる。きっと「もっと稼がないといけない」と言いたかったのでしょう。支社長として、稼がなきゃいけないノルマもあったのだとは思います。

 私は積もり積もるものがあり、手帳をテーブルに叩きつけたのです。私の座るところから、2メートルほど離れたところに投げつけたという感じですね。上司が座るちょっと前のところに…。手帳はスケジュールを書くもので、小さなサイズです。

 パーンと音がしました。同じフロアの隅のほうにいた女性社員たちに、その音は聞こえたようです。会議に出ていた10人ほどは静まり返り、凍り付いたような雰囲気になりました。上司は威厳を保とうとしたのか、とっさに「嶋田!」と怒鳴りました。会議は、その時点で終わったように記憶しています。その後、上司は自席に呼び、「実は君のような威勢のいい男を私は好きなんだよ。握手しよう!」とご機嫌をとってきました。

 握手? たぶん、したんじゃないでしょうか…。一応、上司ですからね。私はその姿勢を見ていると、上司のことをますます嫌いになりました。それ以降も、ぎくしゃくした関係でした。高圧的に抑えつける態度は多少、変わったようです。

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