WEDGE REPORT

2018年10月3日

»著者プロフィール
閉じる

中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 国土交通省によると、昨年末現在で全国に築40年超の老朽化マンションが約73万戸あるが、これまで建て替えられたマンションはわずか250件程度でしかない。マンションの老朽化が進む中で、住民の合意を得ながら建て替えを実現するのがいかに難しいかを表している。

(出所)国土交通省 写真を拡大

 同省の「マンション敷地売却・建替えに関する専門家相談等PT」の犬塚浩座長(京橋法律事務所所属弁護士)は、建て替えの合意を得るためのポイントとして①最も紛争になりやすい建て替え決議の有効性の担保、②どの法律を使って建て替えるかの判断基準の明確化、③デベロッパーの協力度合い、の3点を挙げる。

 さらにマンション住民の人間関係の難しさ、切迫感がないことによって、スピード感が生まれないのが建て替えの進まない背景にあるとみている。建て替え案件の相談に関与してきた犬塚弁護士は「成功した例は少ないが、途中で挫折したケースは数え切れないほどある。一言でいうと、建て替えを実現しようという住民全体としての盛り上がりが足りない」と指摘する。

 建て替えを決議するためには住民(区分所有者)の「5分の4」の賛成が必要となる。建て替えに関わった弁護士に聞くと、この「5分の4」を得るのに大変な労力を使うという。住民の意識が様々で、永住志向の人もいれば、短期間住んでマンション価格にプレミアムがついて購入時よりも値上がりすれば売り抜けようというオーナーもいる。また投資用で購入して、賃貸に出してその収入を当てにしている人、外国人が投資物件として複数購入しているケースもある。

 「5分の4」の賛成を得るためには、こうした住民たちの同意を取り付けなければならない。外国人の国籍もグローバル化しており、オーナーと連絡を取るだけでも手間と時間が掛かる。賃貸収入を得ている区分所有者の場合は、建て替えをすると、その期間は賃貸収入が得られなくなるため反対する人が多いという。彼らをどうやって説得するのか、時間がたてばたつほど、建て替えに向けての盛り上がりが衰えてくる。だが、あまり急ぎ過ぎると、建て替え決議をした後から、建て替え反対の住民から決議無効の訴えが出されたりして、手間取るケースもある。

関連記事

新着記事

»もっと見る