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2018年10月18日

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サウジアラビア人記者ジャマル・カショジ氏がトルコのサウジアラビア総領事館で行方不明になった事件で、ドナルド・トランプ米大統領は17日、カショジ記者が殺害された音声証拠を提供するようトルコ政府に要請した。一方で、記者が定期的にコラムを寄稿していた米紙は、失踪前に書かれたコラムを公表した。

トランプ大統領は17日、ホワイトハウスで記者団に対し、「証拠が存在するなら提供するよう要請している」と述べた。

トルコ当局は、カショジ記者が在イスタンブールのサウジ総領事館内で殺されたことを示す、強力な証拠を入手したと主張している。

カショジ氏は2日にサウジ総領事館内に入って以降、行方がわからなくなっている。サウジアラビア政府はカショジ氏殺害を否定している。

トランプ氏は、自分がサウジアラビアを「かばおう」としているとの臆測は否定した。

一方、米紙ワシントン・ポストは17日、カショジ氏が失踪前最後に執筆したコラムを掲載した。コラムは中東における報道の自由の重要性を訴える内容だった。

ワシントン・ポストのキャレン・アティアー国際オピニオン編集長は、カショジ記者の無事帰国を願い、コラムの公開を遅らせていたと説明した。

アティアー氏はカショジ記者のコラム前文に、「いま私は、カショジ記者の帰国はかなわないだろうと受け入れなければならない。これが、私が編集してワシントン・ポスト紙に掲載される、カショジ氏最後の記事となる」と記した。「このコラムは、アラブ世界の自由に対するカショジ氏の献身と情熱を完璧に記録している。カショジ氏がその人生まで捧げてしまったと思われる自由に」。

最後のコラムに何が

カショジ氏はコラムで、アラブ世界における報道の自由の現状を強く批判していた。

「アラブ世界には、中東版の『鉄のカーテン』が下りている。外部からではなく、アラブ世界の内側で覇権を争う勢力が生み出したものだ」

チュニジアなど一部の国を除いてアラブ圏には報道の自由がないため住民は生活にかかわる事柄について、議論に必要な正確な情報を得られず、国家の言い分ばかりを聞かされている。大勢は国の説明を信じないが、残念ながら住民の大半は国家のうそを受け入れてしまっている――などと、記者は書いた。

「アラブ世界は、かつて欧州で鉄のカーテン消滅のきっかけとなった、国境を越えたメディアの現代版を必要としている。そうすれば、世界的な出来事について市民は情報を得られるようになる。そして何より、アラブの人間が発言するためのプラットフォームを我々は提供する必要がある」

カショジ氏は、同僚のサウジアラビア人記者、サレー・アル・シャヒ氏について言及。シャヒ記者を「サウジ支配者層の意に反する発言をしたとして現在、禁錮5年の不当な刑に服している」と紹介した。

「このような動きに対して、国際社会の反発という悪影響は、もはや実現しなくなってしまった」とカショジ記者は指摘した。「むしろ、すぐに非難されても、すぐに沈黙が続く」。

トランプ氏の最新の見解

サウジアラビアは米政府にとって最も親しい同盟国の1つで、カショジ氏失踪はトランプ政権を苦しい立場に追い込んでいる。

トランプ氏はトルコ政府に録音の提供を要請していると認めると共に、「録音があるか僕にはまだわからないが、たぶんある。ある可能性はある」と付け加えた。

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16日と17日にサウジアラビアとトルコをそれぞれ訪問したマイク・ポンペオ米国務長官からの報告を期待していると、トランプ氏は述べた。

トランプ氏は真実が「週末までには」明らかになるだろうと語った。

一方トランプ氏は、同氏がサウジアラビアをかばおうとしているとの臆測については、「違う。とんでもない。僕はただ、何が起きているのか明らかにしたいだけだ」と述べて否定した。

トランプ氏はここ数日、カショジ記者失踪の背後に「行きずりの殺し屋」がいる可能性を指摘。またAP通信に対し、サウジアラビア当局が「推定無罪の原則」とは逆の、「無実が立証されるまで有罪」扱いされているとして、殺到する同国指導者への非難にくぎを刺した。

報道されている録音内容

サウジアラビアの指導者層を批判してきたカショジ氏が殺害された音声証拠の存在は、トルコ捜査当局が捜査初期に明らかにした。

トルコメディアは証拠の詳細について、カショジ氏が生存していた最後の数分間を録音した残酷なものだと伝えている。

トルコ紙イェニ・サファクはカショジ氏殺害の音声証拠について、在イスタンブールのサウジアラビア総領事ムハンマド・アル・オタイビ氏自身の声も録音されていると報じている。

トルコ政府に近いイェニ・サファク紙は、録音されていたオタイビ総領事の声は、イスタンブールに到着したサウジ情報部員に「外でやれ。私が厄介なことになる」と指示する内容だったと伝えた。

オタイビ氏は16日、民間機でサウジアラビアの首都リヤドに戻った。

トルコ捜査の進捗は

ロイター通信によると、トルコの捜査員は17日、調べていたサウジ総領事公邸を出た。領事公邸は総領事館から約200メートルの距離にあり、公邸では9時間近く捜査が行われた。

捜査チームには検察官と、白い作業着を着た鑑識捜査員が含まれていたという。

トルコのメブルト・チャブシュオール外相は、捜査が16日に行われる予定だったが、オタイビ総領事の家族がまだ中にいたため延期されたと述べた。

カショジ氏が総領事館に入った後に行方不明になった2日当日の監視カメラ映像には、サウジアラビアの外交ナンバープレートをつけた複数車両が総領事館から領事公邸に移動する様子が録画されている。移動はカショジ氏の入館からわずか2時間後のことだった。

総領事館の捜査は15日に行われた。

チャブシュオール外相はポンペオ国務長官との会談について、「有益で実りある」ものだったと話した。ポンペオ氏はトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領とも会談した。

ポンペオ氏は16日にはリヤドを訪問。同国のサルマン国王やムハンマド・ビン・サルマン皇太子と会談した。ムハンマド皇太子は会談で、記者失踪についてあらゆる関与を「強く否定」したという。

10月2日に起きたこと

サウジ政権を批判していたカショジ記者は昨年、自ら母国を離れ、米国を拠点に米紙ワシントン・ポストなどにコラムを寄稿していた。亡命前には、ムハンマド皇太子の政策批判を止めるようサウジ当局から警告を受けていたという。

カショジ氏は現地時間2日午後1時14分、イスタンブールのサウジアラビア総領事館に到着。トルコ人婚約者と結婚するため、書類申請をする予定だった。

サウジ当局はカショジ氏がすぐに無傷で総領事館を出たと主張している。

しかしトルコ当局は、総領事館内で攻撃と格闘があったとみている。

トルコ当局は、サウジ情報部員の一団がカショジ氏を殺害したと疑いをかけている。メディアへ公開された監視カメラ動画に、このサウジ情報部員らのトルコ入国と出国が録画されていた。

米紙ニューヨーク・タイムズは、情報部員15人のうち4人がムハンマド皇太子に関係する人物だと報じた。また、別の1人はサウジ内務省の高官だという。

主要7カ国(G7)の外相は16日、この問題について「透明な」捜査を進めるようサウジアラビアに求めた。

一方、カショジ氏の失踪を受け、国際通貨基金(IMF) のクリスティーヌ・ラガルド専務理事は17日、サウジアラビアで来週開催予定の投資会議への参加を取りやめると発表した。この会議をめぐっては他にも、米企業幹部らが相次いで参加中止を表明している。

(英語記事 Jamal Khashoggi disappearance: US asks Turkey for recording evidence

提供元:https://www.bbc.com/japanese/45897993

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