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2011年7月29日

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宮田徹也 (みやた・てつや)

1970年横浜生まれ。横浜国立大学大学院教育学研究科芸術系教育専攻修士課程修了。東京文化財研究所美術部、ZAIM、横浜デザイン学院非常勤講師を経て、美術評論活動を展開中。主な連載は、批評の庭、アートアクセス、てんぴょう、ヒグマ春夫、その他多数(ウェブ)、「音楽舞踊新聞」「テルプシコール通信」「コルプス」「新かながわ新聞」(紙)など。「コルプス」は編集委員、「代々木通信」は編集長を担当。

 街頭や駅構内で見かける、円盤を投げようとしている人のポスター、インパクトが凄い。この人は、会社帰りにジムで体を鍛えている現代人ではなく、約2500年前に生きた人物なのだ。国立西洋美術館に、ギリシャ時代の神々、オリンピック選手が一堂に会する! こんな豪華な展覧会が、どうして実現したのだろう? 担当研究補佐員、飯塚隆氏に話を聞いた。

2012年のロンドン五輪に向けて

 「本展覧会は大英博物館の企画が基であり、その所蔵作品が展示されています。トピックスは来年のロンドンオリンピックです。2008年の北京オリンピックを機に上海から出発し、その後、香港、スペイン、ソウル、台湾と、世界中を回っています。テーマは身体、ボディー・ビューティフル、肉体の美しさとスポーツです。ギリシャ時代の身体表現なのです」。

≪円盤投げ(ディスコボロス)≫  後2世紀(原作:前450-前440年頃) / 大理石 ©The Trustees of the British Museum

 なるほど、オリンピック・イヤーの4年間、この展覧会は世界中を巡っているのか。そういえば、教科書とかインターネットでギリシャ彫刻の写真って見たことはあるけど、実物ってあんまり無いかも…。

 「日本の美術館には、ギリシャ時代の作品がほとんど所蔵されていません。特に彫刻には出合えない。海外からも、クラシック時代の作品はなかなか来ませんでした。今回の展覧会は点数、規模、質の高さとしてそう関単に実現出来ない企画です。大英博物館の古代部門の、ギリシャ・ローマコレクションは世界的に見ても本当に質が高いのです。当時のパルテノン神殿を飾っていた彫刻が大英博物館にあり、《円盤投げ》など、一番素晴らしい作品が集まっています」。

 当時のパルテノン神殿を飾っていたものというと、正に美の殿堂ではないか。展覧会のみどころを教えて貰った。

知的でスポーツ万能
しなやかで美しい肉体をもつギリシャ人

 「この展覧会は様々な観点を持っています。彫刻の形の美しさ、オリンピック、神話、ギリシャ人の日常にまで及んでいます。特にみどころであるのは、やはりオリンピックでしょう。古代ギリシャ時代、オリンピック以外の世界選手権のような競技祭もギリシャで開催されていました。その競技の様式が現代に影響しているので、2500年前のことがよく分かるのです」。

 「ギリシャにとって肉体の美しさとは、身体能力の高さだけでなく、知的に優れていることも含まれていました。しなやかで均整が取れている肉体、円盤を投げても走ってもOK、さらには演説もできるという総合的に考えた体の美しさです。現代、体を鍛える場所をジムと呼びますが、この語源はギリシャ語のギュムナシオンであり、ギュムノスとは裸体を示しています。現代人は体を造ることが目的となってしまいますが、ギリシャ人はそれを通して何が出来るのかを考えていました。勝利という名誉は、ゼウスに対して技巧を奉ることなのです」。

 「ゼウスに対して技巧を奉る」とは、具体的にどういうことだろうか?

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