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2018年10月30日

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米国防総省は29日、中米諸国から北上し、メキシコを経由して米国に向かっている移民集団に対処するため、米軍約5200人をメキシコ国境に派遣すると発表した。

米北方軍のテレンス・オショーネシー司令官は作戦名を「忠実な愛国者」と発表。軍をテキサス州、アリゾナ州、カリフォルニア州に集中して派遣すると述べた。派遣人数は当初、約800人と見込まれており、予測を大幅に上回ることになった。

これに先立ちドナルド・トランプ米大統領は29日ツイッターに、移民の「侵略」には米軍が待ち構えていると投稿した。

トランプ氏による4月の指示で、メキシコ国境には既に州兵約2100人が展開している。移民集団は、国境までまだ約1600キロの距離にいるとされる。

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11月6日の米中間選挙を1週間後に控え、有権者の支持を得るため移民問題を利用しているとして、与党・共和党と野党・民主党の双方が批判されている。

中間選挙では上下両院で共和党支配が続くのか、民主党が挽回するのかが問われている。

オショーネシー司令官によると、軍は週末までに派遣される。国境警備隊を支援するため、兵器のほかヘリコプターや軍用機、防護壁、有刺鉄線も展開するという。

米税関・国境警備局のケビン・マカリーナン局長も、29日の記者会見に出席し、移民集団が米国境に到達するまで、あと数週間かかるとの推計を明らかにした。

今回の派遣で、米南西国境に展開する兵士の数が、現在シリアとイラクに駐留する米軍兵数を上回ることになると、米紙ウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

トランプ氏は29日、ツイッターに「多くのギャングやいくらかのとても悪い連中が、キャラバンに紛れ込んでこの国の南部国境に向かってきている。頼むから戻れ。合法的な手続きを踏まない限り、合衆国には入国できない。これはこの国に対する侵略で、我々の軍隊が待ち受けている!」と投稿した。

移民の多くは、米国で亡命を申請するつもりだと話している。

米国に到着した移民が、母国での暴力を恐れて亡命を申請した場合、米国は国際法の下、申請を検討する義務がある。

深刻な迫害の恐怖を理由に母国を逃れた者しか、亡命は認められない。この場合、国際法は亡命者を難民として扱う。

たとえ亡命希望者が米国へ不法入国したとしても、亡命申請の検討を受ける権利は変わらない。

より良い暮らしを求めて国を移ろうとする人は、経済移民として扱われる。壊滅的な貧困から逃れるために母国から避難したとしても、経済移民は難民としては扱われず、難民と同様の保護を受けることはできない。

メキシコ国境に派兵した米大統領は、トランプ氏が初めてではない。

バラク・オバマ前米大統領は2010年、国境警備のため州兵1200人を派遣した。また、ジョージ・W・ブッシュ元米大統領は2006年から2008年にかけて、国境警備を支援するために州兵約6000人を送った。この派兵は「ジャンプ・スタート作戦」と呼ばれた。

2度の派遣はいずれも約1年で終了している。


<解説>なぜ急ぐのか――アンソニー・ザーカー、BBCニュース(ワシントン)

銃撃や爆発物がここ1週間、米国の話題を独占したが、ドナルド・トランプ氏は今一度、世間の注目を移民に集めようとしている。メキシコを経由して米国境を目指す移民集団のことだ。

メキシコに亡命申請する人もいたし、国境への道のりはあまりに長い。そのため、移民集団の人数は減ったかもしれない。それでもトランプ大統領は、警鐘を鳴らしている。

移民は合法的に亡命申請をするつもりだ。そのため、米兵約5000人の国境派遣は、具体的な効果はほとんど生まない可能性が高い。

移民集団が国境に到着するまでには、まだ数カ月かかる可能性もあるだけに、その緊急性も疑わしい。

しかし、派遣発表の意味するところは明らかだ。トランプ大統領はこの避難者たちを国家的脅威として扱い、これに対抗する心意気があるのは自分だけだと強調したいのだ。

今のところ、米国の有権者にとって最大の懸案は移民ではない。政治的得点を意図しているかもしれない大統領が中間選挙までにそれを変えるには、あと8日だ。


(英語記事 US sending 5,200 troops to border with Mexico

提供元:https://www.bbc.com/japanese/46027502

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