大量の風力、太陽光発電量を捨てる中国
2011年中国の発電量は約5兆kW時、前年比19%増となり、4兆3000億kW時の米国を一挙に抜き去り世界一の発電大国となった。その後経済が減速気味の中国の発電量の伸びは鈍化したものの、2017年発電量は前年比6.6%増、6兆4000億kW時を超えた。日本の6倍を超え、米国の1.6倍にも達する。しかし、1人当たりの発電量では、中国は依然日本の2分の1、米国の3分の1程度であり、今後もさらに大きな電力需要の伸びが予想される。発電能力が不足するとみられる中で、中国政府は、あらゆる発電設備の建設を進めたが、特に風力、太陽光を中心に再生可能エネルギー設備を推進した。
2017年末の発電設備量は、図‐2の通りであり、風力設備は1億6300万kW、太陽光設備は1億2900万kW、合わせると日本の電気事業者が保有する全発電設備量2億7000万kWを上回っている。発電量は、風力、太陽光それぞれ3034億kW時、1166億kW時(図-3)。ちなみに、2017年度日本の事業用風力の発電量は55億kW時、太陽光は88億kW時だった。
多くの再生可能エネルギー設備は、土地が余っていた西部から北部地域に建設されたが、電力需要があまりない地区であり、再エネにより発電された電力の多くを需要地である沿岸部に送電する必要が生じた。しかし、発電設備建設が想定されていなかった西部地区から沿岸部への送電には能力が不足していたため、再エネからの発電量が増えるに連れ、発電を制御し、捨てる事態が発生した。
2017年に捨てられた太陽光発電量は73億kW時だった。2018年1月から9月に捨てられた風力発電量は222億kW時、発電量の7.7%だったが、地区別に見ると新疆ウイグル自治区24.6%、甘粛省19.7%、内モンゴル自治区12.8%など北部、西部地区で多く捨てられていることが分かる。電力需要以上の発電設備が導入されたが、送電線の能力が不足するために発生した現象だ。
中国政府は、北部、西部での新規再エネ設備導入を制限する一方、2020年までに接続できない量を発電量の5%以下にする目標を設け、送電能力の増強に乗り出しているが、需要量、送電量とバランスしない再エネ発電設備を導入したツケを当分払うことになりそうだ。