2024年12月8日(日)

World Energy Watch

2018年11月16日

(ruslanshramko/Gettyimages)

 9月に起こった北海道大停電により、電力供給では常に需要と供給が一致しなければ、停電することを多くの人が学んだ。通常の品物と異なり電気は大量に安価に貯めることができないため瞬時に需給をバランスさせることが必要になる。供給量が少なくても、多くなりすぎても停電する。

 10月の九州での再生可能エネルギーの出力制御により、原子力、火力発電所の大半は一度停止すると再立ち上げに時間とコストが掛かるため、再エネからの発電量が増えた時に他の電源の発電量を大きく落とし調整することが簡単ではないことも知られることになった。

 電力需要量が多くない時に再エネからの発電量が増えると供給過剰になるので、出力制御が必要になることは、以上の二つの理由から明らかだが、再エネの発電量が増加している国と地域では、供給量が需要量を超えた時に日本の出力制御と比較できないほどの大量の再エネからの電気を送電線に接続できず制御する、簡単に言えば電気を捨てることがしばしば起こっている。需要がある他地域への送電能力が不足する、あるいは他地域でも需要がないために発生するもったいない現象だが、再エネの導入量が増えれば避けることができず、欧州主要国、中国、米国などで発生している。

ドイツも中国も米国も捨てる再エネからの電気

 日本列島は細長い形状から他地域との連携線に限りがあるが、多くの国と連携線が繋がり9カ国と電気の輸出入を行っているドイツですら、国内需要が落ち込む時に再エネからの発電量が増えると全ての電気を消費、輸出することが叶わず、最優先で系統に接続されるべき再エネを年間数十億kW時捨てている。捨てるのもただではない。再エネからの発電量が天候により事前の予測から変動するため、送電管理者は発電事業者に対する給電指令を作り直す必要に迫られ、追加の費用が発生する。ドイツの消費者が負担するその金額は、いま年間約1000億円だ。

 電力需要急増に悩んだ中国政府は発電設備増強に力を入れ、風力、太陽光発電設備導入に関する有利な政策を導入した。この結果、日照時間が長く、風量が大きく、土地に余裕がある北西部を中心に太陽光、風力発電設備の導入が進んだ。あまりに急激な再エネ設備の導入により、政府の再エネ買取額の負担が増えたこと、さらに電力需要が少ない北西部から需要地の沿岸部への送電能力が不足し、再エネの発電量を捨てることが増えたため、昨年中国政府は送電能力が不足する地区での再エネ設備新設を規制し、さらに、今年5月固定価格買取制度の適用中止を突然発表した(「中国太陽光バブルついに終焉へ、世界の太陽光発電市場は曲がり角に」)。

 この政府の取り組みにより捨てられる再エネ発電量の比率は減少しているものの、相変わらず風力を中心に再エネからの発電量が大量に捨てられる状況が続いている。その量は日本の風力発電量の4倍を超えている。再エネからの発電量の増加に悩んでいるのは欧州、中国ばかりではない。米国カリフォルニア州も再エネから発電された電気を捨てている。日本でも、このまま再エネ導入が進むと大量の電気を捨てることになりもったいないが、解決のためにはコストが高い蓄電池くらいしか、今のところ手はない。再エネ主力化の道は遠い。


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