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2019年1月9日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

 心がけていても中々実践できないのが安全運転だが、もし自分の運転をアプリが見守り、安全運転をすることによりポイントがたまり特典と交換できるとしたらどうだろう。そのようなアプリを実際に作り出し、ドライバーに提供している企業がある。しかもこのアプリはドライバーの日々の運転の習慣を自動車メーカーと保険会社が共有するため、安全運転を続けると保険料の低減にもつながるという。

レクシス・ネクシス社(筆者撮影)

 アプリを提供するのは英国に本拠を置くレクシス・ネクシス(LexisNexis)社で、アプリはレクシス・ネクシス・テレマティクスと呼ばれるものだ。独立したアプリというよりはOEMとして自動車メーカーに提供され、メーカーと提携する保険会社に対しUBI(Used Based Insurance 、利用状況に応じた保険料金)のユーザーへの提供を可能にする。

 具体的にどのように作動するのか、というとGPSを使い、例えば道路の制限速度に対しドライバーが速度オーバーをしていないか、あるいは急ブレーキを踏んでいないか、などをアプリがチェックし、それを点数化する。そして点数が高ければそれがポイントとなり、コーヒーの無料券などと交換できる、という仕組みだ。

 欧州でサービスを展開してきたレクシス・ネクシス社だが、米国でもサービスを開始し、その最初のパートナーになったのは三菱自動車である。米国の三菱ユーザーはレクシス・ネクシス・テレマティクスを自動的に提供され、ポイントが貯まると三菱ディーラーでのサービス割引などの特典も与えられる、という。ユーザーはレクシス・ネクシスのアプリをインストールする必要はなく、三菱がユーザーに提供するアプリに組み込まれている。

 このアプリを作り出した理由について、レクシス・ネクシス社では「年間に世界で120万人が交通事故によって死亡し、負傷者は2000~5000万人と言われている。これを少しでも軽減し、安全運転をドライバーが自然に心がけるようなアプリを提供しようと考えた」という。自動車メーカーにとってはユーザーサービスの一環になるし、保険会社は事故で支払う保険料の軽減につながる。さらにアプリを通してユーザーがどのような運転習慣を持つのか、というデータを蓄積できる、という点も大きい。

 もちろん、このような形で自分の運転情報を第三者と共有したくない、と考えるユーザーに対してはアプリを起動させずにメーカーのアプリのみを使用する、というオプションもある。しかし特典がつくため、多くのユーザーがアプリを使用することを選ぶという。

 データの集積は今後自動運転が普及していく中で非常に重要な要素でもある。一般のドライバーの運転の傾向をデータから読み取ることで、自動運転の危険を回避することが可能となるためだ。こうしたデータを集めるのはコストがかかるが、レクシス・ネクシスのアプリは安全運転スコアによりユーザーが自分の運転の傾向を具体的な数字で知ることができる、またポイントがつくことでユーザーに参加する動機づけをする、という点が優れている。

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