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2019年1月14日

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イギリス下院での欧州連合(EU)離脱協定の採決が15日に迫る中、テリーザ・メイ首相は議員らに協定を支持するよう最後の説得を行っている。

メイ首相は14日の演説で、議会は協定を否決して合意なしブレグジット(イギリスのEU離脱)に向かうより、ブレグジットそのものを阻止しようとするだろうと警告する予定。

首相はさらに、2016年国民投票で決まったブレグジットが実現しなければ、政治への信頼は「壊滅的な打撃」を受けると述べる。

一方、最大野党の労働党は、メイ首相の離脱協定が否決された場合、不信任案を提出する方針だ。

労働党のジェレミー・コービン党首は協定に反対票を投じ、否決されれば総選挙実施に向けて動き始める見通し。

BBC番組「アンドリュー・マー・ショー」に出演したコービン氏は、労働党として「タイミングを見計らい、政府不信任案を提出する予定だが、もうすぐだと思う。心配しなくていい」と話した。

議会では保守党議員100人とメイ首相と閣外協力している北アイルランドの民主統一党(DUP)議員10人が、労働党をはじめとする野党と共に、離脱協定に反対する見込みだ。

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メイ首相は14日、工場従業員の前で演説し、「この数週間見てきた通り、ウェストミンスター(イギリス議会)の中にはあらゆる手段を駆使して、ブレグジットを遅らせたり、それどころか阻止しようとする人がいる」と話す予定。

さらに、議会は合意なしブレグジットより、ブレグジットそのものを阻止する方向に動いていると指摘する。

「私は議員らに、彼らの行動が我々の民主主義における国民の信頼にどのような影響を与えるのかを考えて欲しいと頼んでいる」

「たとえば、もしスコットランドやウェールズの人々が住民投票で地方分権を求めているのに、それに反対する下院が、議会の方が物事を知っているからその投票結果を覆すと言ったらどうなるか。あるいは、もう投票をやり直せと言ったら。もし、仮に国民投票でEUに残留すると決まったのに、議会がイギリスをEUから離脱させようとする状況だったら」

「国民の民主主義プロセスや政治家に対する信頼は壊滅的な打撃を受けるだろう。我々には(2016年の)国民投票の結果を実現する義務がある」

メイ首相は1997年にウェールズが議会設置を求めた住民投票を引き合いに出し、「この住民投票の結果は与野党に受け入れられ、その後、ウェールズ議会の正当性に深刻な疑問が投げかけられたことはない」と述べる。この住民投票では、0.3%の得票差で議会の設置が決まった。

「議会はEU基本条約(リスボン条約)第50条を賛成多数で発動すると決めたとき、その事実を理解していた。与野党も2017年の総選挙の際、国民投票の結果を尊重すると約束した時に理解していた」

今後の予定は?

今週のイギリス議会の予定は以下の通り。

  • 14日:離脱協定をめぐる審議4日目
  • 15日:5日目の審議の後、離脱協定の可否を決める「意味のある投票」が行われる。また、協定を再構成するための修正案についても投票が行われる。協定が否決された場合、メイ首相は「代替案」提示に3日間(議会開催日)の猶予が与えられる
  • 16日:メイ首相はEUとさらに協議するため、ブリュッセルへ向かう予定
  • 21日:イギリス下院で「代替案」の投票が行われる。

議会がブレグジットの舵を取る可能性は?

英議会がブレグジットを遅らせたり取りやめるような動きをしない限り、イギリスは3月29日にEUを離脱する。下院の審議日程は政府が管理しているため、議会によるブレグジット中止はあり得ないと感がられてきた。

しかし英紙サンデータイムズは13日、メイ首相の離脱協定が否決された場合に備え、保守党の元閣僚を含む超党派グループが閣外議員が下院の審議日程を変更し、合意なしブレグジットを違法とする法案を提出する方法を模索していると報じた。

これが事実ならイギリス議会の数世紀にわたる慣習が覆る可能性もあり、首相官邸はこの報道を「非常に懸念している」と話している。

EU残留派のある保守党議員はBBCの取材に対し、下院の規則を変えるような計画は聞いていないと話した。その上で、サンデータイムズの報道はEU離脱派の保守党議員を警戒させ、メイ首相の協定を支持させるための「幻想」だと一蹴した。

一方、スコットランド国民党(SNP)のイアン・ブラックフォード議員は、合意なしブレグジットを阻止するためには、EU離脱プロセスの決定権を政府から下院に移すべきだと主張している。

BBC番組「サンデー・ポリティクス」に出演したブラックフォード議員は、「メイ首相は議会とイギリス全体に向かって、自分の協定か合意なしブレグジットか、選択肢はそれしかないと脅すのをやめるべきだ。そういう問題ではない」と述べた。

首相支持の与党議員は増えているのか

これまでメイ首相の離脱協定に反対していた4人のEU離脱派保守党議員が、15日の採決で協定を支持することを表明した。

そのうちの1人、サー・ジェフリー・クリフトン=ブラウンは、離脱協定のさまざまな側面になお「重大な不安」があると話した。

その上で、「先週議会で起きたことで、議長やEU残留派の議員たちがEU離脱を阻止するためにがむしゃらになっていることが分かった」と述べた。

一方、元下院決算委員長のサー・エドワード・リーは、もし協定が否決されれば、EU離脱派議員は「火遊びをしている」と話した。

このほか、アンドリュー・マリソン議員とキャロライン・ジョンソン議員も、疑念は拭えないが協定を支持すると表明した。

2度目の国民投票の可能性は

ブレグジットに反対する超党派議員団は、EU離脱に関する2度目の国民投票実施を求める法案の内容を発表した。

法案は、EU残留か、メイ首相の離脱協定でEUを離脱したいか、国民にあらためて問うべきだとしている。

この法案を支持する下院議員たちは、この2度目の国民投票を実施するには、EU離脱手続きを開始するリスボン条約50条を一時停止する必要があると主張する。その場合、イギリスは現行の離脱期限の3月29日以降もEUに留まることになる。

この法案を推進する議員団は、法案を下院ではなく貴族院(上院)に提出し、議会審議を開始する方針を検討している。

(英語記事 May: No Brexit more likely than no deal

提供元:https://www.bbc.com/japanese/46859684

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