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2019年1月29日

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米政府は28日、経済危機と政情不安で揺れる南米ヴェネズエラの国営石油会社PDVSAについて、資産凍結や米国人との取引禁止などの制裁対象にしたと発表した。米政府は、ヴェネズエラ軍に平和的な政権移譲を受け入れるよう呼びかけた。

米政府の記者会見で、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、制裁によってニコラス・マドゥロ大統領と仲間たちは「これ以上、ヴェネズエラ国民の資産を略奪することができない」と述べた。

スティーヴン・ムニューシン財務長官は、ヴェネズエラ原油の売り上げは今後、マドゥロ政権に流れることはないが、暫定大統領就任を宣言した野党代表のフアン・グアイド国民会議議長を同社が承認すれば、制裁は回避できると説明した。

PVDSAはヴェネズエラにとって貴重な外貨獲得手段で、同時にヴェネズエラが輸出する原油の41%は米国が買い入れている。米国にとってヴェネズエラは原油供給国として上位4位に入る、重要な取引相手だ。

マドゥロ氏はこれを受けて、PVDSAのアメリカ子会社CITGOを保全するため、「アメリカ国内や国際裁判所で政治的、法的対応」を開始するようPVDSAに指示したと明らかにした。

グアイド国会議長については、アメリカをはじめ20カ国以上が暫定大統領として承認している。英仏独を含む複数の欧州諸国は、8日以内に総選挙が行われない場合は、グアイド氏を大統領として認めると姿勢を示した。一方で、ロシア、中国、メキシコ、トルコはマドゥロ大統領を支持。26日の国連安全保障理事会ではロシアが、アメリカはクーデターを企てていると非難した。

グアイド氏は、国の資産掌握を視野に、国会にPVDSAとCITGOの新経営陣を指名するよう支持する方針を示している。

一方で、政府は通貨ボリヴァルの価値を闇市場の交換レートに近づけるため、約35%切り下げた。

平和的権力移譲を軍に呼びかけ

ホワイトハウスで記者会見したボルトン補佐官は、ヴェネズエラ軍に「平和的で民主的で合憲的な権力の移譲を受け入れるよう」求めた。

ボルトン氏が発言する最中に、手元の手書きメモに「コロンビアに兵5000人」と書かれているのを周りの記者たちが気づいたが、意味は不明だ。

軍事作戦上の機密がこれで漏えいしたのではという意見もある。

ボルトン氏は会見で、ヴェネズエラへの軍事介入の可能性を否定しなかった。

これについて後にホワイトハウス報道官は、ボルトン氏の手元のメモについて、「大統領が言ったように、すべての選択肢が検討対象だ」と述べた。

一方で、AFP通信は匿名の政府筋の話として、コロンビア派兵の可能性を「裏づけるものは何も目にしていない」と伝えた。


インフレ率13万%

ヴェネズエラでは数年来、食糧や医薬品など生活必需品が不足し、停電が相次ぐなど経済危機が続き、2014年以来、約300万人もの住民が国外に逃れている。国会調査によると、2017年11から1年間のインフレ率は年率13万%に達した。

2013年3月にウーゴ・チャヴェス大統領が死亡したことに伴い、副大統領だったマドゥロ氏が後任選挙で当選したが、経済の失策と人権侵害への批判が内外で続いている。

昨年春の大統領選で再選されたマドゥロ大統領は今月初め、大統領2期目に宣誓就任したものの、不正選挙だと野党の反発は続き、全国的に反政府デモが続いている。

1999年に発足したチャヴェス政権以来、ヴェネズエラでは社会主義政権が続き、アメリカと対立してきた。トランプ大統領は2017年9月の国連総会で、「ならず者国家」としてヴェネズエラを名指ししている。

2015年の選挙で野党がヴェネズエラ国民会議の多数党となったが、マドゥロ氏は2017年に別の議会を設置し、国会の立法権を剥奪した。

それまであまり有名ではなかったグアイド氏が今月初めに国民会議議長に就任すると、大統領選をやり直すまで大統領職代行の憲法上の権利が自分にはあると表明。グアイド氏の登場により、それまで分裂・対立していた反政府勢力が活気づき、まとまりを見せるようになった。

グアイド氏は学生時代、当時のチャヴェス大統領への抗議デモを組織していた。対するマドゥロ氏は、チャヴェス氏に後継指名され大統領となった。

(英語記事 US hits 'corrupt' Venezuela oil firm PDVSA with sanctions

提供元:https://www.bbc.com/japanese/47037706

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