迷走する日本の「働き方改革」への処方箋

2019年2月20日

»著者プロフィール
著者
閉じる

立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

 豊かな産油国ブルネイは非資源国と比べて先天の優位性を有し、その格差を自ら誇示しているほどだ(参照:「働かなくても、頑張らなくても食べていける世界」)。その延長線上において、労働をめぐって、先天の優位性・格差の本質を探っていきたいと思う。

鳩山氏の倒錯する論理?

 ブルネイと北朝鮮の比較は必ずしも妥当ではないかもしれないが、ブルネイで見聞したことから北朝鮮を連想せずにいられない。核武装の代わりに石油や天然ガス、主体(チュチェ)思想の代わりにイスラム教がある、というのが私の受けた印象だった。

iStock / Getty Images Plus / EmreKayalar

 視覚的な相違は、偶像崇拝くらいだ。北朝鮮は国中いたるところに金日成や金正日の肖像が掲げられているが、ブルネイの場合は国王像を街中で目にすることはない。これもひとえにイスラム教の偶像崇拝禁止によるものではなかろうか。スルタンというアラビア語は「権威」を意味し、宗教の担保によって絶対王権が確固たるものとなった以上、むしろ偶像崇拝は不要だ。

 宗教共産主義国家――。私が勝手に作った名称だが、もう少しこの延長線上で展開してみたい。

 ブルネイの大ファンという日本の元政治家がいる。2009年11月、当時の鳩山由紀夫首相がブルネイのボルキア国王との会談で、石油など天然資源が豊富で、所得税が課税されないブルネイの税制をうらやむような発言をし、読売新聞は2009年11月14日付けで「日本国民も、ブルネイに移住したいと考えるだろう」と題した記事を掲載した。事実ならば、それが鳩山氏の本音吐露だったのではないかと私は思う。

 十数億ないし数十億円の資産をもつとされる日本有数の金持ち政治家ではあるが、資産総額2兆円規模のブルネイ国王と比べれば、鳩山氏の資産は微々たるもので取るに足らない。ただ、鳩山氏が果たして国王の資産規模そのものに羨望の眼差しを向けたのかというと、違うような気がする。

 十数億円の資産だけでも日本国内では超富裕層の部類に入る。野村総合研究所(NRI)の統計基準では、金融資産1億円以上5億円未満が富裕層、5億円以上の場合は超富裕層となる。このような超富裕層である鳩山氏はまさに資本主義の産物、貧富の格差の体現といっても過言ではない。

 ところが、資本主義の申し子ともいえる鳩山氏は、その出自や立場とまったく矛盾する姿勢を取っていた。氏が海外メディアに論文を寄稿し、「日本は米国主導の市場原理主義の暴風に襲われてきた」と批判し、「制御のない市場原理主義をどう終わらせるかが問題」と述べ、持論の「友愛」論を展開した。

 資本主義の所産という出自をもちながらも、友愛や平等を掲げる社会主義に傾倒しているイデオロギーは、論理の倒錯ではなかろうか。

関連記事

新着記事

»もっと見る