世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年3月20日

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 2月25日にイランのザリフ外相は、突然インスタグラムで辞任を発表した。しかし、その二日後の27日には外相に復帰した。ロウハニが辞任を受け入れなかったためである。強硬派のスレイマニ革命防衛隊司令官もザリフ支持の声明を出した。

(Fosin2/IrinaBelokrylova//iStock)

 今回の辞任騒動は驚きを与える出来事であったが、実は、余り驚くべきことでもない。イラン政権内には、ハタミ(大統領)の時代がそうであったように、常に強硬派と改革派、国内派と国際派の対立がある。今回のザリフ辞任騒動は、イランを電撃的に訪問したシリアのアサドとロウハニとの会談から除外されたことが直接の契機になったとされる。トランプ政権によるイラン核合意離脱後、ザリフの役割は下がっていたし、シリア、イラク政策等は革命防衛隊など強硬派が実権を握り、ザリフとの関係は緊張していたようである。シリア、イラク問題では外務省が迂回され、ザリフと革命防衛隊の間の溝は深まっていた。なお、ロウハニ・アサド会談からのザリフ排除について、スレイマニは、それは大統領府事務方の調整ミスであり、除外を意図するものではなかったとしている由である。

 ザリフ外相の辞任騒動について、米ブルッキングス研究所のスザンヌ・マロニー副所長は、Foreign Policy誌ウェブサイトに、2月28日付で‘Iran's Foreign Minister Is Staying, but That Doesn’t Mean He’s Won the Battle of Ideas’と題する解説を書いている。その中で、特に興味深い観察は、(1)ザリフと雖もイランの政教体制維持という点では一致しており、強硬派との対立は戦術に関するものである、(2)ザリフは今回の経緯にも拘わらず、シンボル上の重要性は維持していくであろう、という点である。

 ザリフがインスタグラムを通じて辞任を発表したのは如何にも奇異であるが、これについてマロニーは、「ザリフは、辞任が市民に伝わるように夜のインスタグラムを通じて辞任を発表した。ソーシャル・メディアを巧みに使った。これに対してザリフ支持勢力は留任を求める動きに出た。ザリフの一撃は成功した」と指摘している。

 ザリフはイランの国際社会との橋となってきた。巧みな交渉者として同人に代わる者は俄かにいないといわれる。ザリフはイランがマネー・ロンダリング防止のための国際的枠組みである「金融行動タスク・フォース」に加盟すべきと考えているともいわれる。強硬派はこれに反対している。

 トランプ政権の核合意離脱と強硬な対イラン政策のためイラン外交は閉塞状況にあり、経済は大きく悪化、国民生活を圧迫している。イランが迂闊に自らも核合意を破棄することになれば、イランとの関係を維持していこうと努力している欧州も疎外する。イランとしては2020年の米大統領選挙に期待、それまで待つということであろうか。トランプ政権の強硬なイラン政策は北朝鮮に対する政策とも整合しないものであるが、不規則なトランプ政権の中東政策のために地域が不安定化することがないよう望まれる。

  
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