2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2011年11月22日

 イベントやホームセンターなど、特設の場所でペットを販売する「移動販売」。生体の健康への影響から、業界内外で批判の声が強いが、今でも移動販売を実施しているある業者は、「生後、半年程度経った売れ残りの生体を月に10~15頭ほど他業者から引き取って販売している」と語る。イベントスペースのような場での生体販売は、十分な説明もできないうえに、長時間の移動や展示で動物が弱り、病気にかかりやすい。そのような状況で、生体の購入を促し、安易に買った飼い主が飼育を放棄してしまうという懸念がある一方、「在庫処分」としての役割を担っているという側面もある。移動販売を否定すると、売れ残りの行き先が絶たれるかもしれない。

 店舗での売れ残りは移動販売へ、移動販売でも売れ残ったペットはどこへ行くのか。前出の移動販売を行う業者は「最終的には、親犬・猫としてブリーダーに引き渡される」と言う。

オークション会場にも
格付けが存在する

 全国に十数カ所あるという犬・猫のオークション会場。一時期はメディアでもセンセーショナルに取り上げられたこともあり、全国ペットオークション連絡協議会の統一見解として、取材は受け付けないとのことだった。そんな中、電話取材に応じてくれたオークション関係者によると、会場ごとにランク付けがあるという。優良オークションは、施設の機械化、出陳者とバイヤーの間のトラブルの仲裁や事務手続きの代行など、サービスが充実しており、「場所を提供するだけ」のオークションと差異化を図ろうとしている。

 優良オークションで競り落とされなかった生体は、別にあるランクの低いオークションに出される。それでも売れ残った場合、「『場外取引』のような形で、1000円、2000円といった破格の値段で売られている。最初からそれを目当てにしている小売業者もいる」(業界関係者)という売られ方もされているようだ。ただ、それでも売れ残ってしまえば、やはり出陳者であるブリーダーが手元に引き取らざるを得ない。

行く着く先は
ブリーダーか?

 小売業者やオークション関係者の話からすると、最終的な売れ残りはブリーダーという構図が見えてくるが本当にそうだろうか。

 ブリーダーと直接契約するある小売業者は、「ブリーダーへの返品率は約15%」と教えてくれた。その15%はどこへ行くのか訊くと、「オークションに流れるのでは……」という。しかし、オークションでも売れ残る可能性があることは前述の通りだ。

 ブリーダーの中には「どうしても売れ残ってしまう生体については、懇意にしている業者に引き取ってもらうこともある。恐らくオークションへ出陳しているのだろうと思うが、数百頭という数の生体が一カ所に集まると、感染症などのリスクも高まる。オークションに出した生体は絶対に戻さないようお願いしている」と語る業者もいた。そうすると、必ずしもブリーダーが売れ残りの最終的な引き受け者ではないことが分かる。

 小売業者も、ブリーダーも、「自分たちのところでは売れ残りはない」と、口を揃える。それ自体は事実だとしても、同業他社に引き渡した場合、単に自分たちの手元を離れたということでしかない。それぞれの部分で生まれる「売れ残り」は、必ずどこかへ流れている。この現実について、全国ペット協会副会長で、自身もペットショップ・アサヒペットを経営する太田勝典氏の本音と、考えられる解決策が印象的だった。ぜひ本誌でご覧いただきたい。

 しかし、ペット業界の不透明さの原因は、売れ残りだけではない。本誌では、流通構造から見えたさらなる問題点、12万通のパブコメで話題となった動物愛護法改正における争点、問題に対する業界内の取り組みなどを取材している。さらなる透明化に向け、今後もよりいっそうの努力が必要とされるであろう。

*関連記事:ペット後進国・日本 動物愛護法改正の争点とは

WEDGE12月号 第二特集 「流通不明70万頭? 売れ残りペットはどこへ行く」
◎規制強化でも把握できない70万頭
◎誰も語れない「売れ残り」の行方
◎業界全体でトレーサビリティの確立を

◆WEDGE2011年12月号より


 




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