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2019年5月14日

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ダニエル・パンボ、アナ・ ニコラーチ・ダ・コスタ(BBCニュース)

米中貿易戦争は、両国で合意がまとまり、まもなく決着するとみられていた。ところがアメリカが中国製品への関税引き上げを決定したことで、状況は一変した。

トランプ大統領は5日にツイッターで、10日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)から、中国から2000億ドル(約22兆2000億円)相当の輸入品に対する関税率を現行の10%から25%に引き上げるほか、現在は課税対象外となっている3250億ドルの中国製品についても「間もなく」25%の関税を課す可能性があると表明した。

関税率引き上げの理由については、中国が貿易協議での「約束を破った」からだとしている。

この報復として「必要な対抗措置」を講じる方針だとしていた中国は13日、6月1日から600億ドル(約6兆6000億円)相当のアメリカからの輸入品への関税率を最大25%に引き上げると発表した。

一方で、米通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表と中国の劉鶴副首相による貿易協議自体は、米ワシントンで9日から2日間の日程で予定通り行なわれたものの、米中間の溝を埋めることができずに終了した。

世界トップの経済大国であるアメリカと中国は昨年、互いの輸入品に対し数十億ドル相当の関税を課す報復合戦を繰り広げ、企業活動や消費者に不安の影を落とし、世界経済を圧迫した。

では、米中貿易戦争の中心的な課題をいくつか説明しよう。

(1) 米国の貿易赤字はどのように拡大したのか

不公正な貿易慣行を押し付けているとして中国を非難するアメリカは、中国との貿易戦争を開始した。両国の関税合戦が始まったのは、昨年7月だ。

アメリカが中国を非難する理由は、中国による米企業の知的財産権の侵害だけではない。中国政府が助成金で国内企業を不当に優遇しているとして、中国の経済政策そのものの変更を望んでいる。

さらにアメリカは、419億ドル(約4兆6000億円)という巨額の対中貿易赤字を抑えるため、中国側に今より多くの米国製品を購入するよう求めている。

貿易赤字とは、輸入額が輸出額を上回っている状態のこと。この貿易赤字の削減こそが、トランプ大統領の貿易政策の要だ。

(2) これまでにどんな関税が課されたのか

アメリカは昨年、不公正な貿易慣行を押し付けているとして中国を非難し、同国からの輸入品2500億ドル相当に関税を課した。すると中国もこれに対抗する格好で、アメリカからの輸入品1100億ドル相当に関税を課した。

トランプ大統領は昨年9月、2000億ドル(約22兆3500億円)相当の中国からの輸入品に10%の追加関税をかけると発表。さらに、両国が通商協議で合意に至らなかった場合には今年1月に税率を25%に引き上げるとしていたが、その後の交渉に進展がみられたため、税率引き上げは延期されていた

ところが、ここにきてトランプ大統領は「中国との貿易交渉は継続するが、進展が遅すぎる。中国は再交渉をしようとしているが、ノーだ!」と不満をツイート。米政府は10日、中国からの輸入品2000億ドル相当への関税率を現行の10%から25%に引き上げる制裁措置を発動した。

加えて、現在は課税対象外の中国製品3250億ドル相当に対し、税率25%の関税を追加適用する手続きを開始した。

(3) 課税対象となる品目は?

貿易戦争の開始以降、アメリカによる関税のあおりを受けている中国製品は、機械からオートバイに至るまで、多岐にわたる。

昨年9月には、魚やハンドバッグ、衣料や靴を含む2000億ドル相当の中国製品に10%の関税が課された。

これらの品目は、10日に発動されたばかりの関税率引き上げ対象に含まれる。

中国は、アメリカが「経済史上、最大の貿易戦争」を始めたと非難し、化学薬品から野菜やウィスキーに至るまで、米国製品を標的にしてきた。

中国はさらに、きわめて戦略的に、米与党・共和党の支持基盤で作られる製品や、大豆のようにどこでも購入ができる品目を、課税対象に選定している。

(4) 市場への打撃は?

米中貿易戦争はここ1年の間、金融市場に不安の影を落とす大きな要因となってきた。その不安の影は投資家心理に重くのしかかり、損失をもたらしている。

2018年には、香港ハンセン物価指数は13%以上、上海総合指数は25%近く下落した。

今年に入ってからはやや回復傾向にあり、香港ハンセン物価指数は12%、上海総合指数は16%と、それぞれ値を上げている。

2018年に6%近く値を下げたダウ平均株価は、今年はすでに11%ほど上昇している。

ロイター通信によると、中国人民元相場は昨年、米ドルに対して5%以上、下落したものの、今年はおおむね安定的に推移している。

(5) 他にはどんな貿易紛争が起きている

米中貿易戦争は、他国や世界経済に連鎖的な影響を及ぼしている。

国際通貨基金(IMF)は、米中貿易における緊張の高まりが、「世界経済の成長率が著しく落ち込んだ」一因だと指摘。4月には、2019年の世界経済成長率見通しを下方修正した。

特にアメリカや中国にとって重要な貿易相手国や、貿易におけるサプライチェーンで重要な役割を担う国なども間接的な影響を受けるかもしれない。

中国との貿易をめぐる論争は、アメリカが過去1年間に他国と繰り広げてきた一連の貿易戦争の1つだ。

消費者に米国製品の購入を促すため、トランプ大統領はこれまでメキシコやカナダ、 欧州連合(EU)からの輸入品に課税してきた。これらの国も、報復措置として米国製品に関税を課した。

(英語記事 The US-China trade war in charts

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-48211304

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