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2019年6月4日

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ローラ・クンスバーグ政治編集長

外国元首の公式訪問はいつも決まって華々しく、事前にとことん練り上げられた式次第による、奇妙きわまりない行事だ。

注目されるのは往々にして、何かが予定通りに行かなかったときだ。たとえば、公式訪問中の大統領が王家の一員の呼び方を間違えるとか。熊革の帽子をかぶった兵士が行進中、暑さの余り気絶するとか。公式晩餐会で誰かが、使うべき黄金フォークの順番を間違ってしまうなど、まったくとんでもない話だ。

これから数日の間に、果たしてトランプ氏の子供の1人が女王のコーギー犬とセルフィー写真を撮ったかどうかが明かされるのかもしれないし、ウィリアム王子の妃、ケンブリッジ公爵夫人キャサリン妃が女子トイレでティアラをメラニア・トランプ夫人に少しだけ貸してあげたかどうかも、いずれ分かるのかもしれない。しかしいずれにせよ、余計な装飾を全部取り払えば、これは要するに権力の顕示が本当のテーマだ。

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第2次世界大戦の行方に決定的な影響を与えたノルマンディー上陸作戦など、歴史的に重要な日々から今に至るまでの時間の経過を、私たちはこれからしばらく振り替えることになる。

連合軍の勇気や犠牲を称える行事が相次ぎ、米英両国にとって不可欠な二国間の関係を今後も重視し維持していこうという約束が、両国から繰り返されるだろう。

しかし、イギリスとアメリカの関係がどれだけうまくいくかには、政治の顔ぶれが常に大きく影響する。

テリーザ・メイ英首相とトランプ大統領が揃って登場するときの様子は決まって、少なくとも表向きは、きわめてぎこちないものだった。大統領は毎回イギリスに到着する前に、メイ政権について忌憚(きたん)のない意見を決まって公言していた。訪英直前に必ず英政府について言いたい放題して、派手に物議を醸し、明らかにそれを楽しんでいた。トランプ氏のそういう振る舞いも、ぎこちなさの理由だった。

加えて、2人はあまりに対照的だ。トランプ氏は、政治のルールを破るのが大好きに見える大金持ちで、アメリカのエスタブリッシュメントの意表を突くことで大統領執務室に飛び込んだ。

対するメイ氏は、慎重な政治家だ。愛する政党の仕組みの中で少しずつじわじわと地位を固め、守りたいと思っていた党のトップまで上り詰めた。

トランプ氏はメディアを嘲笑し、自分と意見の異なる相手を挑発するのが大好きだ。対するメイ氏は、できることならメディアや他人と関わりたくない、そっとしておいてもらいたい、公文書の入った閣僚専用の赤い箱さえあれば満足だという印象を与える。

2人の対比は、今回の訪問においていっそう際立っている。メイ首相は間もなく職を離れるが、トランプ大統領は再選を目指しているので。

両首脳はもちろん、4日に多少は話し合いもするだろう。首相官邸はホワイトハウスに対し、気候変動の問題をもっと真剣に受け止めるよう説得しようとする見通しだし、イラン政策ももっと慎重に検討するよう促す予定だ。

その一方でアメリカは、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)がイギリスのインフラ構築に関わっていることを問題視し、そう指摘するだろう。そしてもちろん、ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)意向の貿易関係について、すでにそろそろと始まっている二国間協議も続くはずだ。

しかし、何か劇的な共同声明が4日に発表されるとは、期待しないほうがいい。政治的な展開が権力のバロメーターなのだとしたら、メイ首相の権力は衰えつつある。それが真実だ。そしてトランプ米大統領は、誰が後任になるのか、少なくとも多少は気にしているはずだ。

(英語記事  Trump visit: A barometer of political power

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-48507956

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