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2019年6月27日

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アメリカに不法入国しようとした男性と幼い娘が、米メキシコ国境のリオ・グランデ川で溺れて亡くなった。メキシコの地元紙がこの親子の水死体の写真を掲載したことで、身分証のない移民に対するアメリカとメキシコの厳格な措置への非難が高まっている。

この写真では、1歳11カ月の娘が父親の首に腕を巻きつけた状態で亡くなっている。親子は川の浅瀬に顔を伏せて浮かんでいる。

ホンジュラスやグアテマラ、エルサルバトルといった中米諸国からは、貧困や暴動を逃れた人たちが難民申請のためにアメリカに押し寄せている。

ここ数日だけで少なくとも6人が、アメリカへたどり着く半ばで亡くなっている。トランプ氏の厳しい難民政策が、こうした人々をより危険なルートを選ばざるを得ない状況に押しやっているとの批判もある。

トランプ大統領は、この親子の写真について「不愉快な出来事だ」とコメントしている。


(この記事には、ショッキングな写真が含まれています)


アメリカの国境警備当局によると、昨年は少なくとも283人がメキシコとの国境付近で死亡した。しかし人権活動家は、死亡者数はもっと多いとみている。

水死体となって発見されたオスカル・アルベルト・マルチネス・ラミレスさん(25)と娘のヴァレリアちゃんは23日、メキシコ北部マタモロスからアメリカのテキサス州に向けてリオ・グランデ川を渡ろうとした際に溺れた。

親子の写真はジャーナリストのフリア・レ・ドュク氏が撮影し、メキシコのラ・ホルナダ紙に掲載された。

レ・ドュク氏はBBCの取材に対し、「この写真によって誰かが事態を解決してくれて、川で溺れ死ぬ移民の写真を撮り続けなくて済むようになることを願っている」と話した。

娘を助けようとして

ラミレスさんの妻でヴァレリアちゃんの母親のタニア・ヴァネッサ・アヴァロスさん(21)はAP通信に、家族は2カ月間、人道ビザ(査証)でメキシコに滞在していたと話した。

しかしアメリカ当局に身分を証明できず、難民申請ができなかったために、川を渡ることにしたという。

アヴァロスさんがメキシコ警察に語ったところによると、ラミレスさんは初め、ヴァレリアちゃんと共に川を渡りきり、ヴァレリアちゃんを川岸に置いて、アヴァロスさんを迎えに戻ろうとした。

しかし独り取り残されたヴァレリアちゃんが父親を追って川に入ってしまったため、ラミレスさんは引き返したが、2人とも急流に飲まれてしまったという。

ラミレスさんの母親のロサ・ラミレスさんはAP通信の取材に、「行かないでと頼んだけれど、彼は家族を持つためにお金が必要だった」と話した。


中米諸国の反応

エルサルバトルのアレクサンドラ・ヒル外相は、不法入国のために命の危険をおかさないよう国民に呼びかけた。

その上で、政府がラミレスさんとヴァレリアちゃんの遺体を引き取る費用をまかない、家族へ「必要な支援」を行うと述べた。

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領も、ラミレスさん親子の死を「非常に残念だ」と話した上で、国境を越える危険な行為に警告を発した。

「砂漠やリオ・グランデ川を渡る中で命を落とす人がいる。われわれは常にこれを非難しており、起きてはならないことだと思っている」

また、キリスト教カトリック教会の総本山ローマ法王庁は声明で、法王フランシスコがこの写真を見たと明らかにした。

「法王は2人の死を非常に悲しんでおり、2人と、戦争や悲劇から逃れる中で亡くなった全ての移民のために祈っている」

トランプ大統領は民主党を批判

トランプ大統領がラミレスさん親子の写真を見た後、記者団に対して「不愉快な出来事だ」と話した。

「あの父親は(中略)素晴らしい人物だったかもしれない」

「とても、とても危険な旅だ。その途中で色々なことが起こっている。信じられない数の女性がレイプされている」

その上でトランプ氏は、民主党が自分の移民政策を拒否していることが、不法移民の死につながっていると批判した。

「いつも言っていることだが、彼らが法を変えればこんなことは起こらなかった」

親子の水死体の写真は、シリア内戦でトルコへ逃げる際に溺死したアイラン・クルディくん(3)の写真に似ているとも言われている。

アメリカとメキシコは今月初め、身分証のない移民のアメリカ入国を食い止める措置について合意した。それ以来、こうした移民の国外追放や施設への収容が増加しているという。

(英語記事 Drowning photo exposes US border risk for migrants

提供元:https://www.bbc.com/japanese/48781705

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