海野素央の Love Trumps Hate

2019年7月30日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「ドナルド・トランプ米大統領は信頼できる強い指導者か?」です。これまでに米中西部ミシガン州、東部ペンシルべニア州及び南部フロリダ州などで開催されたトランプ集会に参加しましたが、そこで筆者が観察したのは支持者のトランプ大統領に対するアイデンティティ(同一性)の強さです。彼らはトランプ大統領と完全に一体化し、同大統領をすっかり信頼している様子でした。アイデンティティは、人を動かす最強のパワー(力)であることは言うまでもありません。

 加えて筆者が注目したのは、トランプ大統領が集会で見せる「強い指導者」をアピールする動作です。同大統領はどの集会でも、両手の拳を固く握って前面に出すジェスチャーをします。

 一方、民主党大統領候補指名争いを戦っているバーニー・サンダース上院議員(無所属・米東部バーモント州)は、トランプ大統領を「病的虚言者」と繰り返し呼び、大統領をまったく信用していません。そこで本稿では、現地での筆者の体験と米民主党下院議員との会話を交えながら、トランプ大統領の信頼性並びに指導者としての強さについて述べます。

(Roman Tiraspolsky/gettyimages)

米国民のトランプ像

 米ギャラップ社が行った世論調査(19年6月3-16日実施)によれば、51%がトランプ大統領を「強くて決断力のある指導者」とみています。それに対して、49%は「そうではない」と捉えており拮抗しています。実は、日本人が考えているほど米国人はトランプ大統領を「強くて決断力のある指導者」とは思っていません。

 しかも同調査では、トランプ大統領の「正直さと信頼性」について否定的な意見が過半数を占めています。34%がトランプ大統領は「正直で信頼できる」と回答しているのに対して、65%が「そうではない」と答えています。

 ロイター通信と世界市場調査会社イプソスの共同世論調査(同年7月22-23日)によれば、トランプ大統領の支持率は42%なので、同大統領に対する不信感はそれよりも20ポイント以上も上回っていることになります。

モラーの「腹の内」

 米下院司法委員会及び情報特別委員会で7月24日、ロバート・モラー元特別検察官がロシア疑惑に関して議会証言を行いました。全米で生中継され、約1300万人がモラー氏の公聴会を観たといわれています。

 注目を浴びたモラー元特別検察官の証言の1つが、トランプ大統領の書面聴取に関してです。同大統領はロシア疑惑を巡るモラー氏からの質問に対して対面面談ではなく書面で回答しました。

 以前、トランプ大統領はモラー氏からの質問について「非常に簡単だった」と語気を強めて語っています。しかし、モラー氏はトランプ氏の書面聴取の回答の中に真実ではないことが記載されてあったと証言し、信頼性が低かったという認識を示しました。

 おそらくモラー氏の腹の内はこうです。

 「2016年米大統領選挙でトランプ大統領と側近は、ロシアの選挙介入を認識していたが、それが選挙結果において同陣営に有利に働くと計算し、米連邦捜査局(FBI)に通報しなかった。外国政府の大統領選干渉を意図的に放置していたのにもかかわらず、トランプ大統領は愛国心がある強い指導者のように振舞っている」

 モラー氏はトランプ大統領に対して不信感を抱いていることは確かです。

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