田部康喜のTV読本

2012年9月19日

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田部康喜 (たべ・こうき)

東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 「黒い十人」のタイトルでまず、もしや、と思う。街頭の黒木瞳がストップモーションで一瞬止まり、そのコマが飛んで。やはりそうだ。

「黒い十人の女」へのオマージュ

 NHK BSプレミアムのドラマ「黒い十人の黒木瞳。」の冒頭シーン、市川崑監督の手法である。このドラマは「黒い十人の女」(1961年)に捧げる、オマージュの刻印が押されている。

 この映画の2年前、市川は日本テレビの演出顧問となり、当時は一般的であった生放送のドラマ「恋人」を制作した。63年まで9作品を演出している。

 「黒い十人の女」は、テレビドラマを制作した経験が生きている。主人公の船越英二はテレビ局のプロデューサーである。美貌の妻の山本富士子に、愛人たちがからむ。女優役の岸恵子、CMガールの中村玉緒、ディレクターを目指している岸田今日子、テレビ局の出入りの印刷業者の宮城まり子……。

 草創期のテレビ局の喧騒と熱気を背景として、船越をめぐって十人の女たちの個性がぶつかり合う。山本富士子が船越英二をピストルで偽装殺人する事件から、ドラマの展開はスピードをあげて、宮城まり子の自殺に至る。

 場面の転換は、芥川也寸志の女の情念がうねるかのような音楽である。

十人の女を黒木ひとりで演じる

 「黒い十人の黒木瞳。」の演出家は、市川監督らしいスピード感にあふれる映像の転換と、テンポのよい会話が連続する、あの映画の魅力を十分に知っている。

 脚本と演出は、タカハタ秀太である。映画からテレビのバラエティー番組、CM制作と活動の場は幅広い。

 タカハタは、十人の女を黒木瞳ひとりに演じさせる。放映時間の1時間30分のなかで、長短10本のドラマが展開する、オムニバスである。

 すべてに「黒い」のタイトルがつく。

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