2024年4月26日(金)

Wedge REPORT

2021年6月21日

(AP/AFLO)

 もう「MONSTER」の強さは誰も止められそうもない。WBA・IBF統一バンタム級王者の井上尚弥が19日(日本時間20日)、米国ラスベガスのヴァージンホテルズ・ラスベガスでタイトルマッチを行い、挑戦者のIBF同級1位マイケル・ダスマリナス(フィリピン)に3回2分45秒でTKO勝利。WBA王座5度目、IBF王座3度目の防衛に成功した。これで戦績は21勝(18KO)無敗となり、自身の持つ世界戦連続勝利の日本記録も16に伸ばした。

 初回から左右に動く長身サウスポーのダスマリナスに対し、距離を測りながら相手の右ジャブに左フックを合わせて動きを鈍らせるなど優位に試合を展開。カウンター気味に左フックを巧みに入れて動きを鈍らせるテクニカルなシーンも光った。2回にはロープ際に追い詰めると右アッパーから左ボディーでぐらつかせ、速射砲のような連打で早くもダウンを奪う。容赦のない猛攻を続け、左ボディーを繰り返しながら打ち込み、相手のダメージを蓄積させた。

 3回に入り、ゴングと同時にラッシュ開始。プレッシャーをかけながら執拗に左ボディーを中心に攻勢をかけた。そして残り30秒に迫る辺りで連打から左ボディーフックが炸裂。ダスマリナスは苦痛に顔をゆがめながら悶絶し、2度目のダウンとなった。そして立ち上がってきたところで左ボディーブローを浴びせると相手は倒れ込み、3度目のダウンで勝負を決めた。

 コロナ禍の中で行われた前回の統一王座防衛戦は2020年10月。MGMグランドでの記念すべきラスベガスデビューだったが、このメモリアルマッチは無観客だった。それでもジェーソン・モロニー(オーストラリア)を7回KOで破り、ボクシングの本場米国で鮮烈なインパクトを残した。それ以来、今度はラスベガスのリングで初めて観客を前にIBF指名のランキング1位〝最強〟チャレンジャーをTKOで葬り、目の肥えた本場のボクシングファンが集まった会場を興奮の坩堝へと巻き込んだ。

 現地のインタビューではダメージの全くない綺麗な顔のまま笑顔を浮かべつつ「いい勝利ができたと思う。ボディーでも顔でも倒せる準備をしてきた。ボディーで倒せて良かった」などと冷静に振り返っていた。

残り2団体の世界王者との統一戦

 こうなると気になるのは、やはり井上の「ネクスト」である。バンタム級の4団体統一を目指しているだけに、当然考えられる次戦は残り2団体の世界王者との統一戦しかない。

 ちなみにタイミングよくこの日の試合直前、WBC世界バンタム級王者のノニト・ドネア(フィリピン)とWBO世界バンタム級王者ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)の2団体統一戦が電撃決定。フィリピン同郷王者同士の対決は8月14日(日本時間8月15日)に米カリフォルニア州のカールソンで行われることになった。日本国内ではこの試合の勝者と井上が激突するのではないかと目され、気運が高まっている。

 ドネアはご存じの通り、先月29日(同30日)に前王者ノルディ・ウーバーリ(フランス)を下し38歳にしてWBC王座に返り咲いた5階級制覇王者で「フィリピンの閃光」と呼ばれるレジェンド。井上には2019年11月のワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)決勝で敗れ、WBAスーパー王座を失っている。決して高飛車な態度を見せず、自分に勝った井上にも敬意を表するジェントルマンな立ち居振る舞いは日本のファンにもお馴染みだ。

 一方のカシメロはドネアと同じフィリピン出身ながら似ても似つかない〝ヤンチャぶり〟が目立つパフォーマー。しかし3階級制覇王者で、実力は折り紙付きだ。昨年4月25日にはラスベガスで井上と3団体統一戦の実現が決まり、発表もされていたが、新型コロナウイルスの感染拡大で中止となっている。つまり井上とは浅からぬ〝因縁〟とストーリーラインがある相手と評していい。

 そのカシメロは両耳にピアスをつけ、サングラス姿でガムを噛みながら19日、現地ラスベガスで井上の試合を生観戦。ダスマリナスをTKOで下した〝MONSTER〟の印象を問われ、米メディアには「俺の楽勝。やっつける」とまで言い切っている。

 ドネアも、そしてカシメロも井上との対戦を熱望している。井上も「8・14」の勝者との対戦を強く望んでおり、日本の各メディアは「年末」もしくは「来春」の4団体統一戦〝スーパーファイト〟の実現を半ば内定事項のように報じている。ただ、日本の大半のボクシングファンとしては、やはり1年半前に井上と激闘を繰り広げたドネアとのリマッチこそが〝スーパーファイト〟にふさわしいと考えているようだ。互いにリスペクトし合う両者の間には友情関係も芽生えていることから、かなりドラマチックな闘いになると期待する人も多いかもしれない。


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