2024年5月15日(水)

ヒットメーカーの舞台裏

2013年4月4日

 細谷の表現によると「しっかりした造り」、「少ない振動」、「安定感のあるタイヤ」│ということであった。さらに、細谷はこの分析結果から、ひとつのキーワードを見出した。それが2番目のポイントでもある「振動」だった。「造り」も「タイヤ」も振動に密接に関係している。ならば振動ということで括れば、「安全性というニーズへの訴求を、的確に表現できるのでは」と考えたのだった。

「ディアクラッセ オート4キャス」

 振動については、実は従来もさまざまな技術を製品に反映してきた。生玉子を2メートルほどの高さから落下させても割れずに受け止める低反発素材のエッグショックは、1998年からベビーカーのヘッドレスト部位などに使用してきた。また、路面からの衝撃を吸収するため、各車輪にそれぞれ独立したサスペンション(懸架装置)を取り付けた製品も投入してきた。

 しかし、それぞれの性能や機能を個別にアピールしていたため、トータルとしての訴求力が弱かったのは否めなかった。細谷にはそう映っていた。そこで、新たな機能も付加し、振動の低減にこだわった開発に着手したのだった。

 新開発のおもな機能は2点。平らな形状だったエッグショックを凹凸のある形状に成型した「3Dエッグショック」と、振動の吸収性能を高めた「エアセルクッションタイヤ」である。3Dエッグショックは、最も体重のかかる座面に使用し、振動の吸収とともに座り心地や通気性の向上にもつなげている。

企画と設計が一体の組織で機動力を発揮

 一方の新開発タイヤは、振動を緩和するため、タイヤの左右の側面にくぼみを連続的に配置した形状にした。タイヤ本体の肉厚を変化させることで、本体をたわませ、クッション性能を高めるようにしている。さらに、平らな形状のエッグショックをヘッドレスト部に使用し、これらを統合して「振動レスシステム」と命名した。

 タイヤについては複数の形状で性能を試しながら、耐久試験にも並行して取り組んだ。クッション性能と耐久性の折り合いを付けるまでには1年を要した。

 それでも「開発チームの一体感や自社工場で生産している強みがあったから、これだけスピーディーにできた」と言う。細谷が属するプロダクトセンターは企画・調査担当と設計部隊の混合組織であり、意思疎通の良さが機動力につながっているようだ。


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