WEDGE REPORT

2014年4月14日

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新井克弥 (あらい・かつや)

関東学院大学文学部教授

1960年生まれ。法政大学社会学部卒業後、ライター、予備校教師、研究所員などを経て、2008年より現職。

かつて私も書いた「提灯記事」

 「学生と企業の橋渡しをしてくれる、なんて人のよい企業なんだろう! しかもサービスを無料で提供してくれるなんて! 」

 ……もちろん、そんなことはない。そのシステムを知れば、これが実にカネ儲け至上主義的な事業であることがハッキリする。

 リクルート企業は、一般の民間企業をクライアントとし、学生に向けた企業紹介を提案。契約が成立すれば、企業側から資料やデータが提供される。また、企業で働く人材もインタビューの対象として提供を受ける。もちろん、編集方針等のリクエストも受け付ける。リクルート企業はこれら資料を基に記事を作成し、出来上がった記事は企業側から最終的なチェックを受けて完成となる。

 当然のことながら、この記事は「営利」に基づいて作成される。媒体によっては「企業評論」という、あたかも客観的記述のような体裁を装っているが、そこには金銭の授受が介在している。リクルート企業は、一般企業の紹介記事を1企画、1ページ単位で受注しているのだ。企業はクライアントゆえ、本当に客観的なコンテンツを書くことなど不可能。むしろ企業のお気に召すよう、美辞麗句で埋め尽くされた 「提灯記事」 になる。

 かつて私はライターとして、この業界から仕事を受けていたが、実際のところはさておき、企業の体質には「明るい未来が開けている」「風通しがよい」「グローバル化を推進する」「メセナなど社会的貢献を志向する」、人材へのインタビュー内容についても「やる気満々」「充実した企業ライフを過ごしている」という文脈での記述を要請されたことを覚えている。

 フリーランスの身ゆえ、これに従わないと即刻クビという匕首(あいくち)が突きつけられていた。美辞麗句の盛り方は、ある意味「カネ次第」。カネを盛ると話も盛られるという構図が出来上がっている。ということは、リクルート企業が紹介=評論する企業情報を見たところで、異口同音ということにしかならない。優良企業もブラック企業も、みんな「すばらしい会社」と「評論」されるのである。

 リクルート企業が作り出す、こういったヴァーチャルな企業イメージによって、実際の学生と企業が被害を受けるという事態が生じている。現在、新人の入社3年後の離職率が3割を超えているのだ。

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